地震の備えで大切なこと|家庭でできる準備と住宅の安全対策

日本は世界でも有数の地震多発国です。近年では南海トラフ地震や首都直下型地震など、将来的な大地震の発生も想定されています。こうした状況の中で「地震への備え」は、今や誰にとっても避けられない課題です。
家具の固定や防災リュックなどの非常持ち出し袋の準備といった身近な備えから、住宅そのものの耐震性や制震装置(制振装置)の導入まで、できる対策は多岐にわたります。中でも近年注目されているのが、揺れを吸収して建物へのダメージを抑える「制震ダンパー(制振ダンパー)」です。
本記事では、家庭で今すぐできる基本の備えを整理するとともに、住宅構造の観点から「制震(制振)」という地震対策の仕組みや効果についても分かりやすく解説します。
なぜ「地震の備え」が大切なのか
地震の備えが大切なのは、「いつ・どこで起きても不思議ではない地震」に対して、自分や家族の命を守るための唯一の手段だからです。
日本は世界でも有数の地震多発国であり、日常的に大地震への備えを意識する必要があります。家具の固定や防災リュックなどの非常持ち出し袋の準備といった身近な備えから、住宅そのものの安全性まで、事前の対策が生死を分けることも少なくありません。
そもそも日本は太平洋プレート、フィリピン海プレートなど複数のプレートが複雑にぶつかり合う地質構造に位置しています。このため、全国のどの地域でも大きな地震が起こる可能性があります。
さらに気象庁の統計によると、日本では毎年のように震度5以上の地震が発生しています。家具の転倒や建物の損壊によって避難経路が塞がれるケースも多く、被害を最小限に抑えるためには「家庭での準備」が欠かせません。
そして、地震発生直後には行政の支援がすぐに届かないこともあります。だからこそ、自分や家族を守る「自助の意識」が重要です。非常食や水の備蓄、家具の固定、避難経路の確認といった基本的な備えを日常的に行っておくことで、被害を大幅に減らすことができます。
地震の備えは何を優先すべき?家庭でできる最初の準備
地震の備えを始めるときは、まず「命を守るための最初の一歩」から取り組むことが大切です。難しい設備投資やリフォームを考える前に、家庭でできる基本的な安全対策の優先順位をつけて進めていきましょう。
優先度1|家具の転倒防止対策
最初に取り組むべきは、家具や家電の転倒防止です。大地震では家具が倒れて下敷きになる事故が多く、特に寝室や子ども部屋など、就寝中に危険が及ぶ場所は注意が必要です。
背の高い家具にはL字金具などの固定器具を取り付け、重い物は下段に収納するなど、日常の工夫で大きな被害を防げます。また、ガラス扉や食器棚には、ガラス飛散防止フィルムを貼ると安心です。
優先度2|非常食・水の備蓄
次に重要なのが、非常食や水の備蓄です。地震発生直後は物流が止まり、支援物資が届くまでに数日かかることがあります。
最低でも3日分、できれば1週間分の食料・飲料水・簡易トイレを用意しておきましょう。保存期間を確認し、ローリングストック方式(使いながら補充する方法)で管理すると無駄がありません。
優先度3|家族の連絡・避難計画
災害時は電話がつながりにくくなるため、家族で事前に連絡手段と集合場所を決めておくことが大切です。SNSのメッセージ機能や災害伝言ダイヤルの使い方を共有し、勤務先・学校・自宅それぞれの避難経路も確認しておきましょう。
また、高齢者や小さな子どもがいる家庭では、避難時の役割分担を決めておくとスムーズです。
優先度4|防災グッズの点検と管理
防災リュックなどの非常用持ち出し袋の中身は、定期的に点検・入れ替えを行うことが大切です。懐中電灯や電池、モバイルバッテリー、救急用品などが正常に使えるか確認しましょう。
非常用持ち出し袋は玄関近くなど、すぐに持ち出せる場所に置き、家族全員がどこにあるか把握しておくことも重要です。
家庭内の備えだけでは不十分?住宅そのものを守る必要性

家具の固定や非常食の備えは、地震対策の第一歩としてとても重要です。しかし、それだけでは建物自体の被害を防ぐことはできません。大きな地震では、家具よりも建物そのものの強度が被害を左右します。ここでは、住宅そのものを守るために考えるべきポイントを整理します。
家庭内対策の限界と建物の脆弱性
家庭内の地震対策として、家具の固定や非常食の備蓄は「二次被害」を軽減する上で非常に効果的です。倒れた家具によるケガや避難経路の遮断を防ぐことができ、初期対応としては欠かせない取り組みといえます。
しかし、これらの対策だけでは建物そのものの損傷を防ぐことはできません。大きな地震では建物の構造自体が揺れに耐えきれず、倒壊や損傷によって命の危険にさらされるケースも少なくありません。
特に1981年(昭和56年)以前に建てられた旧耐震基準の住宅は、現在の基準を満たしておらず、構造的な弱点を抱えている可能性があります。そのため、家具の固定や防災グッズの備えといった一次的な対策と併せて、住宅自体の安全性を確認することが重要です。耐震診断を受けることで現状のリスクを把握し、必要に応じて補強や制震(制振)対策を検討することが、家族の命を守る第一歩になります。
地震に対する建物の構造的対応
地震の揺れをどれだけ建物が吸収できるかによって、被害の大きさは大きく変わります。
建物の地震対策には3つの主要なアプローチがあります。
- 耐震構造:「壊れにくくする」ための強化
- 免震構造:「揺れを伝えにくくする」ための工法
- 制震(制振)構造:「揺れを吸収してダメージを軽減する」技術
このように、建物自体の構造レベルで対策を講じることが、長期的な安心につながります。
住宅の安全性強化で得られる長期的メリット
住宅の安全性を高めることは、家族の命を守ることに直結します。
具体的な対策ステップは以下のとおりです。
- 耐震診断による現状把握
- 必要に応じた補強工事
- 制震装置(制振装置)の導入検討
特に制震ダンパー(制振ダンパー)は、繰り返し発生する地震にも効果を発揮し、「一度の施工で長期的安心」が得られる点で注目されています。家具の固定などの一次的対策に加え、建物そのものを守る視点を取り入れることで、本当の意味での「地震への備え」が完成します。
建物を守る3つの仕組み|耐震・免震・制震(制振)の違い
地震に強い家をつくるには、「耐震」「免震」「制震(制振)」という3つの仕組みを正しく理解することが大切です。いずれも地震の揺れによる被害を軽減するための技術ですが、目的や構造の仕組みが異なります。3つの仕組みの特徴と違いを比較しながら、どのような建物にどの技術が適しているのかを分かりやすく整理します。
耐震構造|建物の柱や梁を強化して揺れに耐える仕組み
特徴
- 構造部材(柱・梁・壁)を強化
- もっとも一般的な地震対策
- 比較的低コストで導入可能
メリット
- 施工コストを抑えられる
- 既存建築への適用が容易
- 基本的な耐震性能を確保
デメリット
- 揺れ自体を抑制できない
- 繰り返しの地震でダメージが蓄積
- 長期的なメンテナンスが必要
既存建物への対応
- 比較的容易に改修可能
- 壁や柱の補強が中心
- リフォーム時に実施しやすい
免震構造|建物と地盤の間に免震装置を設置し、揺れを遮断する仕組み
特徴
- 地盤と建物の間に特殊な装置を設置
- 揺れを遮断する高度な技術
- 高い地震対策を実現
メリット
- 室内被害を大幅に軽減
- 家具の転倒防止
- 建物への直接的な衝撃を抑制
デメリット
- 高額な導入コスト
- 定期的なメンテナンスが必要
- 設置に広いスペースが必要
既存建物への対応
- 設置が極めて難しい
- 大規模な工事が必要
- 新築時の導入が最適
制震(制振)構造|制震ダンパー(制振ダンパー)で地震エネルギーを吸収し、建物の揺れを抑える仕組み
特徴
- 制震ダンパー(制振ダンパー)で揺れのエネルギーを吸収
- 柔軟に揺れを受け流す
メリット
- 繰り返しの地震に効果的
- 免震構造より低コスト
- 建物の損傷を最小限に抑制
デメリット
- 完全な揺れの遮断は難しい
- 設置に専門的な技術が必要
- 建物の構造によって効果に差
導入条件
- 製品によっては新築時の設計段階での導入が基本
- 適正な数量で最大の効果を発揮
- 専門家による適切な配置設計が重要
耐震・免震・制震(制振)はいずれも「地震の揺れから建物と人を守る」ための技術ですが、それぞれの目的とコスト、施工条件が大きく異なります。耐震はもっとも広く普及している基本的な対策であり、費用を抑えつつ一定の安全性を確保できます。免震は揺れ自体を遮断する高度な技術で、特に高層ビルや公共施設などに適していますが、新築時の導入が前提となるケースがほとんどです。そして、これらの中間的な位置づけにあるのが制震(制振)構造です。
制震(制振)構造は建物の変形を抑え、繰り返す地震にも効果を発揮するため、「費用を抑えつつ安全性を高めたい」一般住宅にも現実的な選択肢となっています。建物の規模や築年数、予算に合わせて、最適な地震対策を選ぶことが重要です。
※注意:制震(制振)構造と免震構造は、耐震構造が十分あってこその構造になるので、耐震とのトレードオフにはなりません。あくまでも+αで設置する必要があります。
住宅で使われる制震ダンパー(制振ダンパー)とは?

「制震(制振)構造」は、建物に伝わる揺れのエネルギーを吸収して被害を軽減する仕組みであり、新築時の設計段階で導入できる現実的な地震対策として注目されています。
中でも中心的な役割を担うのが、「制震ダンパー(制振ダンパー)」と呼ばれる装置です。繰り返し起こる地震にも高い効果を発揮することから、「長期的に安心できる地震対策」として採用する家庭が増えています。
ここでは、制震ダンパー(制振ダンパー)の仕組み・種類・導入メリット・実際の技術事例を通して、住宅に制震(制振)を取り入れるための具体的な方法を分かりやすく解説します。
制震ダンパー(制振ダンパー)の仕組み
制震ダンパー(制振ダンパー)とは、地震の揺れによって生じるエネルギーを吸収し、建物に伝わる衝撃を和らげる装置です。柱や梁などの構造部分に取り付けられ、揺れのエネルギーを熱エネルギーに変換し、吸収します。
耐震構造が「建物を強化して揺れに耐える」仕組みであるのに対し、制震(制振)構造は「しなやかに受け流して損傷を防ぐ」考え方です。
そのため、繰り返し発生する地震や余震にも効果を発揮し、建物の寿命を延ばす役割を担います。住宅用の制震ダンパー(制振ダンパー)は壁の内部や梁の間などに設置でき、新築・リフォーム時の設計段階で組み込むことで、外観を損なわずに導入できます。
制震ダンパー(制振ダンパー)の種類
制震ダンパー(制振ダンパー)には、構造や素材の違いによっていくつかのタイプが存在します。
それぞれの特徴を理解することで、自宅の構造や目的に合った製品を選びやすくなります。
油圧式(オイル)ダンパー
シリンダー内のピストンがオイルを押し流す際の粘性抵抗を利用して、地震の揺れを吸収する仕組みです。自動車のショックアブソーバー技術を応用しており、微小から大きな揺れまで幅広く対応できます。
瞬間的に発生する大きなエネルギーにも対応でき、高層ビルなどでも多く採用されています。
- 【特徴】:ピストンの往復運動とオイル流動抵抗でエネルギーを吸収、繰り返しの揺れにも耐久性が高い
- 【メリット】:高い減衰力で揺れを大幅低減、余震など繰り返しの揺れにも強く性能が安定
- 【デメリット】:オイル漏れの可能性がある(ただし、製品によっては高度な技術でこのリスクを最小化)
鋼材ダンパー
鋼材が地震の強い揺れで塑性変形する際に、振動エネルギーを熱エネルギーに変換して吸収する仕組みです。金属の降伏によるエネルギー吸収を利用しており、構造が単純で比較的安価なのが特徴です。住宅から中高層ビルまで幅広く採用されています。
- 【特徴】:金属の降伏によるエネルギー吸収、温度変化や経年劣化が少なく耐久性が高い
- 【メリット】:大地震で高い減衰効果を発揮、設置コストが低く長期に安定
- 【デメリット】:繰り返しの小規模震動により金属疲労や累積塑性変形による性能低下の可能性がある。一度大きく変形すると回復困難。設置にはスペース確保や設計検討が必要
ゴム系ダンパー
特殊な粘弾性ゴムや合成樹脂の伸縮・粘性抵抗を利用して、地震エネルギーを熱に変換して吸収する仕組みです。ゴムの弾性で繰り返しの揺れにも対応可能で、低層住宅や木造住宅に適しています。柔軟で扱いやすく、費用面でも比較的導入しやすいのが特徴です。
- 【特徴】:粘弾性材料の弾性変形と粘性抵抗によるエネルギー吸収で柔軟性が高い
- 【メリット】:速度に依存しない。建物が大きく変形すると効果が高くなる。
- 【デメリット】:温度変化・経年で劣化しやすく耐用年数は鋼製より短い傾向。劣化・損傷時には交換が必要で修理は困難
制震ダンパー(制振ダンパー)が選ばれる理由
制震ダンパー(制振ダンパー)が注目される最大の理由は、繰り返し起こる地震にも効果を発揮する持続性にあります。建物内部で揺れのエネルギーを吸収するため、余震や中規模地震でもダメージを蓄積しにくいのが特徴です。
また、免震構造に比べて導入コストが抑えられる点も大きなメリットです。さらに、揺れそのものを軽減することで家具の転倒や壁のひび割れを防ぎ、居住中の安全性と心理的な安心感を高めます。ただし、製品によってはリフォーム時に設置は難しく新築時の設計段階で導入を検討する必要があります。建物の構造計画に組み込むことで、最大の効果を発揮できます。
こうしたバランスのよさから、制震ダンパー(制振ダンパー)は「住宅の長寿命化」を支える現実的な地震対策として広く採用されています。
新築住宅におすすめの制震ダンパー(制振ダンパー)「MER SYSTEM」

制震(制振)技術の応用製品として評価されているのが、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(エムイーアールシステム)」です。
この制震ダンパー(制振ダンパー)は、油圧式(オイル)ダンパーを知り尽くした世界に誇るヤマハモーターハイドロリックシステムと共同開発した製品で、以下の特徴を持っています。
多方向の揺れに対応:用途に応じて選べる2タイプ
- Cross Type(壁内設置型):柱と梁に設置し、横方向やねじれの揺れ、共振に効果的
- Base Type(基礎設置型):基礎と土台の間に設置し床下から効果を発揮、横揺れ・縦揺れの両方に対応
高い耐久性
- 耐久年数約60年~70年(20年保証)、メンテナンスフリー
- ヤマハ社の特許技術を採用
高い安全性
- 大地震から微振動まで様々な揺れを100年間想定した耐久テストをクリア
- オイル漏れを防ぐ長寿命タイプのOリングを採用
幅広い適用:基本的には新築住宅への導入が推奨されますが、Cross Typeはリフォームにも対応可能。在来工法・2×4工法に対応
繰り返し地震への耐性:余震を含む複数回の地震にも効果を発揮
まとめ|家庭の備えと住宅対策、どちらも欠かせない「地震への備え」
地震の被害を最小限に抑えるためには、家庭での備えと住宅そのものの対策の両立が欠かせません。家具の固定や非常食の備蓄など、日常でできる準備は「命を守る第一歩」です。
一方で、建物自体が倒壊すれば、どれほど備蓄があっても安全は確保できません。そのため、耐震・免震・制震(制振)といった構造的な対策を理解し、自宅の状態や築年数に合わせた方法を選ぶことが重要です。特に制震(制振)構造は、新築時に導入することで、コストを抑えつつ繰り返しの地震にも強い現実的な選択肢として注目されています。
なお、旧耐震基準の住宅(1981年以前に建築)については、制震装置(制振装置)の導入を検討する前に、まず耐震補強が必要です。建物の基本的な強度を確保した上で、制震(制振)技術を組み合わせることが、真の安全性につながります。日常の備えに加え、住まいそのものの安全性を見直すことが、本当の意味での地震対策を実現する第一歩です。
- SUPERVISOR 監修者
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高橋 治(Osamu Takahashi)
東京理科大学 工学部 建築学科 教授
/博士(工学)
/構造設計一級建築士/
構造計算適合判定資格者/建築構造士 -
1991年、東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社構造計画研究所を経て、現職に至る。専門は建築構造設計、免震・制振技術。
「建物の安全と快適性を、革新的な技術で両立させる」ことを信条に、建築用オイルダンパーや三次元免震システムなど、最先端の耐震・免震技術の研究開発を牽引する第一人者。
日本建築学会賞(技術)や日本免震構造協会協会賞(技術賞)など受賞多数。大学発ベンチャー「株式会社サイエンス構造」の代表も務める。


