地震対策

食器棚の地震対策|転倒・飛散を防ぐ7つの方法と家全体を守る制震(制振)システム

地震大国である日本では、いつどこで大きな揺れが発生するか分かりません。地震による被害で意外と見落とされがちなのが、家具の転倒や落下によるケガです。特に食器棚は、重量があり高さもあるため、地震時には非常に危険な家具の一つとなります。

食器棚には陶器やガラス製の食器が多数収納されており、地震の揺れで落下すると割れて鋭利な破片となります。また、ガラス扉が使われている食器棚では、扉自体が破損して飛散するリスクもあります。食器棚が転倒すれば、避難経路を塞いでしまい、迅速な避難を妨げる可能性も考えられます。

本記事では、食器棚の地震対策として今すぐできる実践的な方法から、建物全体を守る制震(制振)システムまで、幅広く解説します。家族の安全を守るために、できることから始めていきましょう。

地震時に食器棚が危険な3つの理由

食器棚が地震時に特に危険とされる理由を、具体的に3つ解説します。

理由①:食器棚本体の転倒

食器棚は高さがあり、中に重い食器を収納しているため、重心が高くなりやすい家具です。地震の横揺れによって、固定されていない食器棚は簡単に転倒してしまいます。

東京消防庁のデータによると、地震による負傷者のうち、相当数が家具類の転倒・落下・移動によるものとされています。特に、阪神・淡路大震災では震度7の地域で約6割の部屋で家具が転倒し、部屋全体に散乱したというデータもあります。

背の高い食器棚は転倒時に大きな衝撃を与えるため、下敷きになると重大なケガにつながります。また、転倒した食器棚が廊下や玄関を塞いでしまうと、避難経路が確保できず、二次災害のリスクも高まります。

理由②:食器の落下・破損

食器棚の中には、陶器やガラス製の食器が多数収納されています。地震の揺れによって食器が棚から落下すると、割れて鋭利な破片が床に散乱します。

特に夜間の地震では、暗闇の中で割れた食器の破片を踏んでしまい、足をケガする危険性があります。また、落下した食器が頭や体に直撃すれば、打撲や切り傷などのケガを負う可能性もあります。

食器の落下は、比較的小さな揺れでも発生する可能性があるため、日頃から対策を講じておくことが重要です。

理由③:ガラス扉の飛散

多くの食器棚にはガラス扉が使われています。地震の揺れでガラス扉が破損すると、鋭利なガラス片が広範囲に飛び散ります。

ガラスの破片は非常に鋭く、素足や素手で触れると深い切り傷を負う危険があります。また、破片が目に入ると失明のリスクもあります。ガラス扉を使用している食器棚には、飛散防止対策を施しておくことが推奨されます。

食器棚の地震対策7選|今すぐできる方法

食器棚の地震対策は、「転倒防止」「収納の工夫」「飛散防止」の3つの軸で考えることが重要です。ここでは、賃貸住宅でも実践できる方法を優先的に紹介します。

転倒防止器具の設置【転倒防止】

食器棚の転倒を防ぐためには、専用の転倒防止器具を設置することがもっとも効果的です。器具にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。

突っ張り棒

  • 特徴:天井と食器棚の上部との隙間に設置し、上からの力で転倒を防ぐ
  • 対象住居:賃貸・持ち家どちらもOK(壁に穴を開けない)
  • メリット:比較的安価で設置が簡単、取り外しも容易
  • デメリット:天井の強度が弱いと効果が低下する
  • ポイント
    • 天井の強度を必ず確認する
    • 食器棚の幅に合った長さを選ぶ
    • 定期的に緩みがないかチェックする(3カ月に1回程度)

L字金具

  • 特徴:食器棚の背面と壁をネジで固定するもっとも確実な方法
  • 対象住居:持ち家向け(壁に穴を開ける必要あり)
  • メリット:固定強度がもっとも高く、確実性がある
  • デメリット:壁に穴が残る、設置に工具が必要
  • ポイント
    • 壁の下地(柱や間柱)にネジを打ち込む
    • 石膏ボードだけにネジを打つと強度不足になるため注意する
    • 下地探しセンサーの使用を推奨する

耐震マット

  • 特徴:粘着性のあるゲル状マットを食器棚の底面と床の間に挟む
  • 対象住居:賃貸・持ち家どちらもOK(床を傷つけない)
  • メリット:壁や床に穴を開けずに設置できる、取り外しも簡単
  • デメリット:耐荷重に限界がある、定期的な交換が必要
  • ポイント
    • 食器棚の重量に対応した製品を選ぶ
    • 耐用年数は5~7年程度、定期的な交換をする
    • 床面がフラットでないと効果が低下する

転倒防止プレート

  • 特徴:食器棚の前方下部にプレートを挟み、後方に傾斜させる
  • 対象住居:賃貸・持ち家どちらもOK(床に穴を開けない)
  • メリット:壁に穴を開けずに重心を壁側に移動できる
  • デメリット:食器棚が若干傾くため見た目に影響する場合がある
  • ポイント
    • プレートの厚みは1~3cm程度を選ぶ
    • 食器棚の扉の開閉に支障がないか確認する
    • 耐震マットと併用するとより効果がある。

重い食器は下段に収納する【転倒防止】

食器棚の重心を下げることで、転倒のリスクを低減できます。重い陶器の大皿や土鍋などは下段に、プラスチック製容器や軽いグラスなどは上段に収納しましょう。

収納物の配置を見直すだけでできる対策なので、今すぐ実践できます。

食器は引き出し収納を優先する【落下防止】

扉式の収納よりも、引き出し式の収納のほうが地震時の安全性が高くなります。引き出しは開閉時に食器が落下しにくく、揺れによる飛び出しも抑えられます。

既存の食器棚が扉式の場合でも、引き出しトレーやボックスを棚の中に設置することで、同様の効果が得られます。引き出し式にすることで、日常的な使い勝手も向上するため、一石二鳥の対策といえます。

滑り止めシートやファイルボックスを活用する【落下防止】

食器の下に滑り止めシートを敷くことで、地震時の横滑りや落下を防ぐことができます。滑り止めシートは100円ショップでも購入でき、低コストで実践できる対策です。

また、ファイルボックスを活用した「立てる収納」も効果的です。お皿を横に重ねるのではなく、ファイルボックスに立てて収納することで、倒れにくく取り出しやすくなります。

この方法は、地震対策だけでなく、収納効率や使い勝手の向上にもつながります。

耐震ロック(耐震ラッチ)の取り付け【落下防止】

食器棚の扉には、耐震ロック(耐震ラッチ)を取り付けることをおすすめします。耐震ロックは、揺れを感知すると自動的に扉をロックし、食器の飛び出しを防ぐ装置です。後付け可能なタイプも多数販売されており、比較的簡単に設置できます。

食器棚の耐震ロックは、地震時の食器落下を防ぐ上で非常に有効な対策です。新しく食器棚を購入する際は、耐震ロックが標準装備されているものを選ぶとよいでしょう。

ガラス飛散防止フィルムを貼る【飛散防止】

ガラス扉を使用している食器棚には、飛散防止フィルムを貼ることが推奨されます。フィルムを貼っておくことで、ガラスが破損した際に破片が飛び散るのを防ぎます。

飛散防止フィルムには、UVカット機能がついたものも多く、日焼け防止の効果も期待できます。貼り付ける際は、気泡が入らないようにヘラを使って丁寧に貼りましょう。

フィルムは経年劣化するため、5~10年を目安に貼り替えることが推奨されます。

食器棚の配置を見直す【転倒・落下・飛散防止】

食器棚の設置場所を見直すことも、重要な地震対策です。避難経路となる玄関や廊下を塞がない位置に設置しましょう。

また、就寝場所の近くに食器棚を置くと、夜間の地震時に転倒や落下物による被害を受けるリスクが高まります。寝室からできるだけ離れた場所に配置することが望ましいです。

食器棚が転倒した際の被害を最小化するためには、レイアウトの工夫も欠かせません。家具の配置を見直すことで、安全な生活空間を確保できます。

そのほかの家具に必要な地震対策

食器棚以外の家具にも、地震対策を施すことが重要です。ここでは、主要な家具の対策方法を紹介します。

冷蔵庫に必要な地震対策

冷蔵庫は重量がありますが、地震の揺れによって「ロッキング移動」という現象が発生することがあります。これは、揺れに合わせて冷蔵庫が少しずつ移動する現象で、壁やほかの家具にぶつかる危険性があります。

冷蔵庫の固定には、ベルト式の転倒防止器具が有効です。また、冷蔵庫の下にジェルマットを敷くことで、滑りを防ぐこともできます。

冷蔵庫の上に物を置くと、落下の危険があるため、できるだけ上には何も置かないようにしましょう。

テレビに必要な地震対策

薄型テレビは軽量ですが、画面が大きいため不安定で転倒しやすい家具です。テレビ台とテレビを転倒防止ベルトで固定することが推奨されます。

また、テレビ台の下に耐震マットを敷くことで、テレビ台自体の滑りも防げます。壁掛けテレビの場合は、取り付け金具がしっかり固定されているか定期的に確認しましょう。

タンスに必要な地震対策

タンスは高さがあり重量もあるため、転倒すると非常に危険です。L字金具で壁に固定するか、突っ張り棒を使用して転倒を防ぎましょう。

また、タンスの引き出しが揺れで飛び出すと、避難の妨げになります。引き出しストッパーを取り付けることで、飛び出しを防ぐことができます。

電子レンジに必要な地震対策

電子レンジは高い位置に設置されることが多く、落下すると危険です。粘着マットで固定するか、ストラップで棚と固定しましょう。

電子レンジの周辺には、落下しやすい小物を置かないことも重要です。

家具対策だけでは不十分|建物全体の制震(制振)対策

ここまで家具の地震対策を中心に解説してきましたが、家具を固定するだけでは限界があります。建物自体が大きく揺れてしまえば、どれだけ家具を固定していても被害を完全に防ぐことは困難な場合もあるでしょう。

例えば、L字金具で壁に固定した食器棚でも、建物の揺れが大きければ固定金具が外れてしまう可能性があります。また、耐震マットや突っ張り棒も、想定以上の揺れには対応しきれないケースがあります。

そこで重要になるのが、建物全体の地震対策です。特に「制震(制振)構造」は、建物の揺れ自体を吸収する効果があり、家具の転倒リスクを根本から低減できます。

制震(制振)構造について

制震(制振)システムとは、建物に制震装置(制振装置)を組み込むことで、建物自体の衝撃(建物に伝わる地震エネルギー)を熱に変換し、地震の揺れを吸収する構造です。建物の損傷を抑え、繰り返す地震にも効果を発揮します。

制震装置(制振装置)は壁の中や柱と梁に設置されるため、居住空間を圧迫することなく導入できます。また、建物の外観にも影響を与えないため、デザイン性を損なうこともありません。

制震(制振)構造の3つのメリット

制震(制振)構造を導入することで、以下のような大きなメリットが得られます。

メリット1:家具の転倒リスクを大幅に低減

制震(制振)構造の最大のメリットは、建物の揺れそのものを吸収することで、家具の転倒リスクを根本から低減できる点です。

一般的な建物と制震(制振)構造を導入した建物では、地震時の揺れ幅が大きく異なります。日本制震システムの実験データによると、制震装置(制振装置)を設置することで、建物の揺れを約40~48%吸収できます。

揺れが小さくなれば、食器棚の転倒リスクはもちろん、食器の落下やガラスの破損も軽減しやすくなります。家具の固定対策と制震(制振)システムを組み合わせることで、より高い安全性を確保できます。

メリット2:建物の損傷を防止・繰り返しの揺れにも強い

地震による建物へのダメージは、一度の大きな揺れだけでなく、余震による繰り返しの揺れでも蓄積されます。特に日本では、本震の後に何度も余震が続くケースが多く、建物の劣化が進みやすい環境にあります。

制震(制振)構造は、本震だけでなく余震に対しても効果を発揮します。揺れを吸収することで、建物の構造へのダメージを軽減し、長期的な耐久性を保つことができます。

また、建物の変形を抑えることで、壁のひび割れやドアのゆがみなども防ぎやすくなります。これにより、地震後の修繕費用を抑えられる可能性もあります。

制震(制振)構造で家族を守る

家具の地震対策は、日常生活の中で今すぐ実践できる重要な取り組みです。しかし、より安全性を高めるためには、建物全体の揺れを吸収する制震(制振)構造の導入も検討する価値があります。

制震(制振)構造は、家具の転倒防止だけでなく、建物の長期的な安全性を守る効果もあります。大切な家族と住まいを守るために、家具対策と建物対策の両面から地震への備えを考えていきましょう。

新築・既存住宅におすすめの制震ダンパー(制振ダンパー)「MER SYSTEM」

制震ダンパー(制振ダンパー)にもさまざまな種類がありますが、ここでは制震(制振)技術の応用製品として評価されている、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(エムイーアールシステム)」をご紹介します。

この制震ダンパー(制振ダンパー)は、油圧式(オイル)ダンパーを知り尽くした世界に誇るヤマハモーターハイドロリックシステムと共同開発した製品で、以下の特徴を持っています。

多方向の揺れに対応:用途に応じて選べる2タイプ

Cross Type(壁内設置型)

柱と梁に設置し、横方向やねじれの揺れ、共振に効果的なタイプです。建物の構造躯体に設置する高性能な制震ダンパー(制振ダンパー)で、特殊オイル(温度不変)を使用しているため、火災の心配もありません。地震はもちろん、強風(台風)・交通振動にも効果を発揮します。

基本的には新築住宅への導入となりますが、Cross Typeであれば、リフォーム(耐震改修)時にも対応可能です。在来工法・2×4工法に対応しています。

Base Type(基礎設置型)

基礎と土台の間に設置し、1階の床下から効果を発揮するタイプです。横揺れ・縦揺れの両方に対応します。また、電車や大型車等による交通振動にも効果を発揮します。基礎と土台の間に設置する構造上、新築時のみの設置となります。

高い耐久性

  • メンテナンスフリー
  • ヤマハ社の特許技術を採用

ヤマハ社との共同開発により、メンテナンスフリーを実現しています。壁の中に設置されているため、基本的に点検やメンテナンスはできません。そのため、制震ダンパー(制振ダンパー)を選ぶ際は、耐久性が重要なポイントとなります。

高い安全性

  • 大地震や微振動を想定し200万回以上の作動テストをクリア
  • オイル漏れを防ぐ高性能なOリングを採用

繰り返し地震への耐性

余震を含む複数回の地震にも効果を発揮します。地震の揺れに限らず風による超極低速な揺れや、繰り返し発生する地震にも効果を発揮します。

新築時の導入で最適な性能を

新築住宅の設計段階から組み込むことで、建物の構造に合わせて最適な位置に配置でき、より高い制震(制振)効果が期待できます。

制震(制振)技術は年々進化しており、住宅向けにもさまざまなタイプの製品が開発されています。世界レベルの技術で、住まいの安全性を高めます。

日本制震システムの製品の詳細はこちら

まとめ|食器棚の地震対策は家具固定と建物の制震(制振)対策の両面で

食器棚の地震対策は、転倒防止器具の設置、重い食器の下段収納、耐震ロックやガラス飛散防止フィルムの活用が基本です。今すぐできる対策から始めましょう。

しかし、家具の固定だけでは限界があります。建物全体の揺れを吸収する制震(制振)構造を導入することで、家具の転倒リスクを根本から低減できます。

地震はいつ発生するか分かりません。家具対策と建物対策の両面から、地震への備えを進めていきましょう。

SUPERVISOR 監修者
高橋 治

高橋 治(Osamu Takahashi)

東京理科大学 工学部 建築学科 教授
/博士(工学) /構造設計一級建築士/
構造計算適合判定資格者/建築構造士

1991年、東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社構造計画研究所を経て、現職に至る。専門は建築構造設計、免震・制振技術。
「建物の安全と快適性を、革新的な技術で両立させる」ことを信条に、建築用オイルダンパーや三次元免震システムなど、最先端の耐震・免震技術の研究開発を牽引する第一人者。
日本建築学会賞(技術)や日本免震構造協会協会賞(技術賞)など受賞多数。大学発ベンチャー「株式会社サイエンス構造」の代表も務める。
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