住まいづくり

軟弱地盤でも家づくりを諦めない ―地盤改良の基礎知識と、構造の健全性を支える「制震(制振)」の考え方―

家の地盤

地震が多い日本では、住まいの安全性を考える際に「耐震性能」に目が向きがちです。しかし実際には、その建物を支える”地盤の状態”によって、同じ耐震性能でも建物の挙動は大きく変わります。土地探しや間取り計画が順調でも、足元の条件が整っていなければ、想定した性能を発揮しにくくなるためです。

一方で、地盤調査の結果が想定より厳しかったとしても、その土地で家づくりを諦める必要はありません。地盤の特性を理解し、必要に応じて地盤改良を行い、さらに建物側では「耐震」を土台に「制震(制振)」をどう重ねるかを整理しておくと、判断しやすくなります。

本記事では、軟弱地盤が建物に与える影響、地盤調査と代表的な改良工法、そして地盤を整えた上で検討したい“揺れへの備え”としての制震(制振)の位置づけを解説します。併せて、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(エムイーアールシステム)」の特徴も紹介します。

  • 軟弱地盤での家づくりへの不安
  • 不同沈下や液状化による建物被害
  • 土地に合う地盤改良工法の選び方
  • 地盤改良後の建物への揺れ対策

軟弱地盤とは何か?特徴と建物への影響

軟弱地盤

軟弱地盤は「地盤が弱い」という一言で片付けられがちですが、実際は沈下・液状化・揺れ方など、影響の出方が複合的です。まずは、どのような現象が起こり得るのかを整理しておくと、対策の優先順位を立てやすくなります。

建物の傾きにつながる「不同沈下」

軟弱地盤で特に意識したいのが、建物が不均一に沈む「不同沈下」です。建物全体が同じ量だけ沈むなら、居住性への影響は比較的小さく済むこともありますが、片側だけ沈むと話が変わります。

不同沈下が起きると、ドアや窓の開閉が重くなる、床が傾いていると感じる、内装にひびが入るといった形で生活上の不具合が生じやすくなります。さらに進むと、構造体に“ねじれ”が入り、想定しない力の流れができてしまうため、地震時の挙動にも影響し得ます。

地震時に条件が重なると起こり得る「液状化」

砂質地盤で地下水位が高い場所では、地震時に液状化のリスクが話題になります。液状化は、地盤が揺れにより一時的に“締まりを失う”ことで沈下や傾きが生じる現象で、周辺インフラや外構にも影響が出る場合があります。

ただし、液状化は「砂質」「地下水位」「揺れの条件」などが重なると起こりやすいもので、土地ごとにリスク評価の考え方が変わります。自治体のハザードマップ等の情報と、地盤調査結果の両方から、総合的に判断する姿勢が重要です。

軟らかい地盤は“揺れ方”にも特徴が出る

地盤が軟らかいと、地震波の性質によっては地表面の揺れが大きく感じられることがあります。また、揺れが長く続くように感じられるケースもあり、建物側への負担が予測しにくくなる点が課題になります。

そのため軟弱地盤の家づくりでは、「沈下への対策」と「揺れへの備え」を切り分けて考えることが重要になります。地盤改良は主に前者への対策で、後者へは建物側の設計(耐震・制震(制振)など)で対策します。

地盤調査の基本と、結果の読み取り方

調査

地盤対策は“勘”ではなく、調査データに基づいて方針を決めることが基本です。調査の種類と見方を押さえると、施工会社との打ち合わせで確認すべきポイントが明確になります。

住宅で一般的なSWS試験(スクリューウエイト貫入試験)

戸建て住宅で広く使われているのがSWS試験です。先端がスクリュー状のロッドに荷重をかけ、地中にねじ込む際の貫入抵抗から、地盤の相対的な支持力を推定します。SWS試験は住宅規模に適した調査として普及していますが、地盤は層状構造で変化するため、「どの深さで」「どの位置で」弱い層があるのかを見ることで、どのような地盤改良が必要かを判断します。調査点の配置や、支持層の深さの見立てが、改良工法の選定に直結します。

換算N値の意味

調査結果では、地盤の強度を示す指標として換算N値が用いられます。換算N値は、地盤がどの程度締まっているかを深さごとに把握するための目安で、数値が小さい層が厚く続く場合は、支持力の不足や沈下リスクの観点から地盤改良が検討されやすくなります。

ただし、判断はN値の大小だけで決めるのではなく、「どの深さに・どの厚さで・どの範囲に」低い層が分布しているかを読み取り、支持層の位置関係も含めて整理することが重要です。

軟弱地盤で検討される代表的な地盤改良工法

地盤調査

地盤改良は「どれが正解」というより、地盤条件と建物条件に合わせて選ぶ考え方です。支持層の深さ、周辺環境、施工条件などを踏まえて、合理的な工法を選定します。

表層改良工法

軟弱層が比較的浅い場合に検討されるのが表層改良です。地表付近の土と固化材を混合して強度を確保し、建物の荷重を支えられる状態に整えます。

表層改良は、地盤の弱い部分を“面”で補強する発想に近く、改良範囲の中で基礎が安定して荷重を受けられるようにすることが目的になります。地表面に近い層の性状が原因で不同沈下のリスクが高い場合に、検討されやすい工法です。

表層改良は、条件が合えば工期や施工性の面で整理しやすい一方、改良深さの設定が肝になります。浅すぎれば改良の効果が十分に得られず、必要以上に深くすれば改良範囲が増えて計画が煩雑になります。

そのため、支持層の位置や、改良範囲と建物配置との関係も含めて計画します。例えば、建物の外周部だけでなく建物直下をどこまで改良範囲に含めるか、将来の外構計画や掘削範囲と干渉しないか、といった点も整理しながら進めます。調査結果の層構成と、建物荷重のかかり方を併せて見て、改良深さと範囲を決める流れになります。

柱状改良工法

住宅でよく採用されるのが柱状改良です。地中に円柱状の改良体を造り、建物荷重を支持層へ伝える考え方です。

表層改良が“面で支える”方向だとすれば、柱状改良は“点(柱)を複数造って支える”イメージに近く、支持層が一定の深さにある場合に検討されやすい工法です。建物の荷重が改良体を通して伝達されるため、不同沈下リスクの整理において重要な選択肢になります。

柱状改良は適用範囲が広い一方で、改良体の長さ・配置・本数と、基礎の計画との整合が重要です。改良体の仕様は「支持層をどこに見立てるか」「どの深さまで到達させるか」といった判断に左右され、同時に基礎形式や配筋計画との整合も求められます。

また、建物の形状や荷重バランスによって、どの位置にどの程度の改良体を配置するかの考え方も変わります。単に改良体を設ければいいという話ではなく、建物側の計画とセットで成立させる視点が必要です。

鋼管杭工法

支持層が深い場合や、施工条件によって柱状改良が難しい場合などに、鋼管杭工法が検討されます。小口径の鋼管を支持層まで到達させ、その先端支持力で建物を支える考え方です。

支持層が深いと、改良体を長く設定する必要が出てきますが、鋼管杭は到達させたい深さが明確なときに検討しやすい工法の一つです。建物荷重を支持層へ確実に伝えることを目的に、計画条件に応じて採用が判断されます。

敷地条件や近隣条件(重機搬入、施工スペース、騒音・振動など)とも関係するため、工法の選定は「地盤条件だけで決まらない」点に注意が必要です。例えば、敷地の間口が狭い、隣地との距離が近い、工事車両の進入経路に制約がある、といった条件が施工方法に影響する場合があります。

また、周辺環境によっては施工時の配慮事項が増えることもあるため、調査結果だけで早期に決め切るのではなく、現場条件を踏まえて施工性まで含めて整理することが重要です。結果として、地盤条件・建物条件・施工条件を並べて比較し、もっとも合理的な工法を選定する流れになります。

地盤を整えた後に考えるべき「揺れへの備え」

備えるチェック

地盤改良が完了すると「足元の不安が解消した」と感じやすいのですが、地震対策はそこで終わりません。沈下対策と揺れ対策は役割が異なるため、建物側での備えを別途整理することが重要です。

地盤改良が主に担うのは「沈下の抑制」という役割

地盤改良の主目的は、建物荷重を支持できる地盤条件を整え、不同沈下のリスクを下げることです。一方で、地震時に入力される揺れそのものを“なくす”機能ではありません。そのため、地盤改良を行った場合でも、建物側では耐震計画を土台として、必要に応じて制震(制振)などの考え方をどう重ねるかを検討します。

補強された「硬い土台」が構造に伝える衝撃

地盤改良を行い、強固な支持層と建物をしっかりつなぐことは、不同沈下を防ぐための大前提です。しかし、構造設計の視点で見ると、足元を固めることには別の側面もあります。それは、「地震の揺れエネルギーが、建物へダイレクトに伝わりやすくなる」という点です。

軟らかい地盤のままでは、地盤が変形することで揺れの一部を吸収したり、周期が変わったりすることもありますが(それ以上に沈下のリスクが大きいため推奨されません)、改良によって「硬い土台」が形成されると、地盤の変形による揺れの吸収効果が小さくなり、結果として地震動が基礎から建物へ直接的に伝わる傾向が生じます。

このとき、建物が耐震性能の確保のみを目的として剛性を高めた設計となっている場合、逃げ場を失った衝撃のエネルギーは構造上、柱・梁の接合部や、釘・ビスなどの接合要素へ負担が集中しやすくなります。つまり、地盤改良によって沈下のリスクを抑えれば抑えるほど、建物側にはその衝撃を受け流す、あるいは吸収する仕組み――すなわち「制震(制振)」の重要性が高まるのです。

耐震を土台に「制震(制振)」を重ねる考え方

木造住宅

制震(制振)は、耐震の代わりに使うものではなく、耐震を土台として検討される位置づけです。特に、揺れが複数回続くケースも想定するなら、揺れに対する“状態変化”をどう考えるかがカギになります。

制震(制振)が担う役割:揺れのエネルギーを吸収する

耐震は、柱・梁・耐力壁・金物などで構造を成立させ、倒壊・崩壊を防ぐための基本です。一方で大きな揺れが繰り返されると、釘・ビスのわずかな浮き、木材のめり込み、接合部の微細な変形などが生じる場合があり、外観から把握しにくい点が課題になります。

そこで、耐震を確保した上で、制震装置(制振装置)によって揺れのエネルギーを吸収し、構造体に入力される負担のかかり方を整える、という整理が行われます。言い換えると、倒壊防止の土台(耐震)に、揺れを吸収する考え方(制震(制振))を重ねる、という順序です。

壁内設置が前提だからこそ「耐久性」が比較ポイントになる

制震装置(制振装置)は、壁の中など点検しにくい位置に設置されるケースが多いのが一般的です。完成後に状態確認をしようとすると、内装を解体する必要が生じることもあり、現実的には簡単ではありません。

そのため、制震(制振)を比較するときは、方式の違いだけでなく、設置環境と維持管理のしやすさまで含めて考える必要があります。具体的には「壁内に設置される前提で、長期の使用環境をどう想定しているか」「点検が難しい状況で、どのような考え方で耐久性を確保しているか」といった視点が、比較ポイントになりやすいです。

軟弱地盤の家づくりで押さえたい実務ポイント

ポイント

軟弱地盤の対策は、地盤改良だけで完結するものではありません。地盤・基礎・上部構造の“つながり”を意識して確認することで、計画の抜け漏れを減らしやすくなります。

「地盤改良+基礎形式+耐震計画」をセットで確認する

地盤改良の内容が決まったら、次に重要なのが基礎計画との整合です。改良体(杭や改良柱)と基礎の関係、荷重の受け方、不同沈下を想定したディテールなど、設計側の説明を受けた上で整理しておくと安心につながります。

また、上部構造側では、壁量と配置バランス、接合部仕様、施工管理体制などが重要です。特に近年は必要壁量の考え方がアップデートされているため、設計の前提条件を最新の扱いで確認することが望ましいです。

制震(制振)は「装置の種類」だけでなく「配置設計(解析)」がカギになる

制震(制振)は、装置の種類やスペックの比較だけでは判断しにくい分野です。建物形状、壁配置、重心と剛心の関係などによって、装置に入力される変形の出方が変わるためです。

そのため、制震(制振)を検討する際は、装置そのものに加えて「どの位置に、どのような意図で配置するか」「根拠のある検討(解析)が行われているか」を確認できるかがポイントになります。

新築・既存住宅におすすめの制震ダンパー(制振ダンパー)「MER SYSTEM」

制震装置MER SYSTEM

制震ダンパー(制振ダンパー)にもさまざまな種類がありますが、ここでは制震(制振)技術の応用製品として評価されている、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(エムイーアールシステム)」をご紹介します。

この制震ダンパー(制振ダンパー)は、油圧式(オイル)ダンパーを知り尽くした世界に誇るヤマハモーターハイドロリックシステムと共同開発した製品で、以下の特徴を持っています。

多方向の揺れに対応:用途に応じて選べる2タイプ

■Cross Type(壁内設置型)

柱と梁に設置し、横方向やねじれの揺れ、共振に効果的なタイプです。建物の構造躯体に設置する高性能な制震ダンパー(制振ダンパー)で、特殊オイル(温度不変)を使用しているため、火災の心配もありません。地震はもちろん、強風(台風)・交通振動にも効果を発揮します。

基本的には新築住宅への導入となりますが、Cross Typeであれば、リフォーム(耐震改修)時にも対応可能です。在来工法・2×4工法に対応しています。

■Base Type(基礎設置型)

基礎と土台の間に設置し、1階の床下から効果を発揮するタイプです。横揺れ・縦揺れの両方に対応します。また、電車や大型車等による交通振動にも効果を発揮します。基礎と土台の間に設置する構造上、新築時のみの設置となります。

高い耐久性

  • メンテナンスフリー
  • ヤマハ社の特許技術を採用

ヤマハ社との共同開発により、メンテナンスフリーを実現しています。壁の中に設置されているため、基本的に点検やメンテナンスはできません。そのため、制震ダンパー(制振ダンパー)を選ぶ際は、耐久性が重要なポイントとなります。

高い安全性

  • 大地震から微振動まで様々な揺れを100年間想定した耐久テストをクリア
  • オイル漏れを防ぐ高性能なOリングを採用

繰り返し地震への耐性

余震を含む複数回の地震にも効果を発揮します。地震の揺れに限らず風による超極低速な揺れや、繰り返し発生する地震にも効果を発揮します。

まとめ:地盤と建物を分けて考え、最後に“つなげて”整理する

軟弱地盤の家づくりでは、地盤改良の要否だけでなく、その後の基礎計画から建物の地震対策までを一貫した視点で捉えることが重要です。「沈下を防ぐ対策」と「揺れに備える対策」は、その役割が根本から異なるため、まずは個別に整理した上で、全体を最適化していく必要があります。

具体的には、以下のように役割を分けて考えます。

  • 地盤改良:建物の重みを支え、将来的な「不同沈下に備える」ための土台づくり
  • 耐震:大地震に対し、建物が「倒壊・崩壊することを防ぐ」ための骨組みづくり

この2つの基本性能を確保した上で、さらに揺れのエネルギーを吸収する「制震(制振)」という考え方を重ねます。

地盤と基礎がしっかりしていても、繰り返しの揺れは建物の接合部にダメージを蓄積させます。制震(制振)によって“揺れをいなす”機能を加えることで、構造の健全性を長く維持することが可能になり、住まいの安全対策としての方向性がより明確になります。地盤から建物までを同じ設計思想で組み立てることが、真に合理的で、長く安心して住める住まいづくりにつながります。

地震に強い家
SUPERVISOR 監修者
高橋 治

高橋 治(Osamu Takahashi)

東京理科大学 工学部 建築学科 教授
/博士(工学) /構造設計一級建築士/
構造計算適合判定資格者/建築構造士

1991年、東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社構造計画研究所を経て、現職に至る。専門は建築構造設計、免震・制振技術。
「建物の安全と快適性を、革新的な技術で両立させる」ことを信条に、建築用オイルダンパーや三次元免震システムなど、最先端の耐震・免震技術の研究開発を牽引する第一人者。
日本建築学会賞(技術)や日本免震構造協会協会賞(技術賞)など受賞多数。大学発ベンチャー「株式会社サイエンス構造」の代表も務める。
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