地震対策

レジリエンス強化とは?住まいのハード面から考える地震対策の考え方

木造住宅

「レジリエンス強化」という言葉を耳にする機会が増えてきました。企業活動や社会インフラの文脈で語られることが多い言葉ですが、住まいにとってのレジリエンスとは、地震や強風などの外力を受けても、被害を抑え、生活を速やかに再開できる力のことです。

防災用品の備蓄やハザードマップの確認も大切ですが、住まいそのものの物理的な強さ——建物のハード面——が整っていることが、レジリエンスの土台になります。本記事では、住宅レジリエンスという視点から、耐震と制震(制振)を組み合わせた地震対策の考え方を、分かりやすく整理します。

  • 住宅レジリエンスの基本
  • 耐震と制震の違い
  • 地震後の暮らしの守り方
  • 住まいの備えの進め方
目次

レジリエンス強化とは?住まいの視点から考える

「レジリエンス強化」という言葉は近年さまざまな場面で使われていますが、住まいの分野ではどのように捉えればよいのでしょうか。まずは言葉の意味から整理し、住まいの視点でレジリエンスを考えるとはどういうことかを見ていきましょう。

レジリエンスとは「受け止めて回復する力」

レジリエンス(resilience)は、もともと「跳ね返す力」「回復力」を意味する言葉です。外から強い力が加わったときに、完全に壊れず、受け止めた上で元の状態に戻る力を指します。

地震対策の文脈でレジリエンスを考えると、「揺れを完全に防ぐ」ことよりも、「揺れを受け止めて、その後の生活を速やかに再開できる」ことが重要な視点になります。建物が大破してしまえば再建に長い時間がかかりますが、損傷を抑えて機能を維持できれば、避難後すぐに自宅に戻り、暮らしを立て直すことができます。

企業・社会インフラ文脈での使われ方

レジリエンス強化という言葉は、これまで主に企業のBCP(事業継続計画)や、電力・通信・交通などの社会インフラの文脈で使われてきました。例えば「災害が起きても事業を止めないための人材・システムの備え」「停電時でもネットワークを維持する電源の冗長化」といった用途です。

住宅レジリエンスという視点

一方、住宅の分野でも、同じ考え方を応用することができます。地震のような大きな外力を受けたとき、住まいがどれだけ被害を抑え、住み続けられる状態を保てるか——これが「住宅レジリエンス」です。

防災グッズの備蓄やハザードマップの確認も大切な備えですが、そもそも住まい自体が大きく損傷してしまうと、備蓄を生かすことも難しくなります。住まいのハード面を整えることは、すべての備えの土台になる取り組みです。

関連記事:レジリエンス住宅とは?災害に強く、速やかに日常を取り戻す住まいの条件

住宅レジリエンスを構成する3つの要素——ハード・ソフト・コミュニティ

住宅レジリエンスは、大きく3つの要素で構成されていると整理できます。それぞれが補完し合う関係にあり、バランスよく整えていくことが大切です。

①ハード:建物そのものの物理的強さ

耐震性能、制震(制振)装置の有無、基礎の状態、屋根の重さ、接合部の強度など、住まいの物理的な性能に関わる要素です。これが整っていると、大規模地震を受けても建物が機能を保ちやすくなります。

②ソフト:防災備蓄・情報・保険

非常食・水・簡易トイレなどの備蓄、地震保険への加入、ハザードマップや避難経路の把握、スマートフォンの防災アプリなど、「モノ・情報・制度」による備えです。発災後の生活を支える重要な要素です。

③コミュニティ:地域との連携

近隣住民とのつながり、町内会や自治会の防災訓練、自治体からの情報提供など、社会的なつながりに基づく備えです。災害時の助け合いは、公的な支援が届くまでの時間を支える大きな力になります。

土台となるのはハード面

この3つはそれぞれ役割が異なり、どれか一つだけで完結するものではありません。ただし、優先順位を考えるなら、ハード面が土台となります。建物そのものが機能していなければ、備蓄も地域との連携も生かしにくくなるからです。

ソフトやコミュニティの備えを否定する話ではなく、「まず家が無事であってこそ、これらの備えが生きる」という関係性として捉えるのが自然です。

なぜ「ハード面の強化」が住宅レジリエンスの土台なのか

前章で「ハード面が土台」と触れましたが、なぜそういえるのでしょうか。災害時の暮らしを具体的にイメージしながら、ハード面が果たす役割を見ていきます。

建物が機能してこそ生活再開ができる

大規模地震の後、自宅が大きく損傷すると、生活再開のハードルは一気に高くなります。避難所での生活が長期化したり、仮住まいを探す必要が出たり、自宅の修繕や建て替えに時間と費用がかかったりします。

一方、建物の損傷が限定的で住み続けられる状態であれば、備蓄していた水や食料を使いながら、自宅で生活を立て直すことができます。電気やガスが止まっても、住まいという「居場所」が確保されていることの意味は大きいのです。

繰り返しの揺れ(本震+余震)がもたらす建物への負担

地震は一度きりで終わらないことが多く、本震の後に余震が続きます。建物は一度の揺れでは持ちこたえても、繰り返しの揺れで少しずつダメージが蓄積し、最終的に大きな損傷につながる場合があります。

レジリエンス強化を考える上では、「一度の地震に耐える」だけでなく、「繰り返しの揺れにも対応できる」視点が重要になります。

「在宅避難」を可能にする住宅性能の重要性

近年は、避難所に行かずに自宅で避難生活を送る「在宅避難」という選択肢も広がっています。感染症対策やプライバシー、ペットとの生活など、在宅避難が選ばれる理由はさまざまですが、その前提となるのは「住まいが安全に使い続けられる状態にあること」です。

住宅のハード面を整えることは、在宅避難という選択肢を可能にし、住む人の暮らしを守る取り組みでもあります。

ハード面の地震対策の基本——耐震・免震・制震(制振)の役割

ハード面の地震対策には、耐震・免震・制震(制振)という3つの考え方があります。それぞれ役割が異なるため、違いを整理しておくと判断しやすくなります。

耐震:建物そのものの強さを確保する

耐震は、壁・柱・接合部などを強化して、建物そのものを地震に「耐える」強さにする考え方です。現在の建築基準法が求める基本的な地震対策であり、すべての住まいの土台となる考え方です。

免震:地面の揺れを建物に伝えないようにする

免震は、建物と基礎の間に免震装置を設けて、地面の揺れが建物に直接伝わらないようにする仕組みです。大規模な地震でも建物が受ける揺れを抑えやすい一方、設置には専用の設計と一定の敷地条件が必要で、主に中・高層建築や特別な住宅に採用される傾向があります。

制震(制振):建物に入った揺れを吸収する

制震(制振)は、建物に取り付けた装置(制震ダンパー/制振ダンパー)で、地震の揺れのエネルギーを吸収する考え方です。耐震が「建物を固める」、免震が「揺れを伝えないようにする」のに対し、制震(制振)は「入ってきた揺れを吸収する」という、異なる役割を担います。

木造住宅では耐震+制震(制振)が検討しやすい

3つの仕組みは、どれがもっとも優れているというものではなく、建物の用途・構造・予算によって選ばれ方が変わります。木造の戸建て住宅では、まず耐震で建物の強さを確保し、その上で制震(制振)を組み合わせるという考え方が検討しやすい傾向があります。耐震があくまで土台であり、制震(制振)はその上で揺れのエネルギーをどう吸収するかを考える選択肢です。

繰り返しの揺れに強い住まいへ——制震(制振)がレジリエンス強化に寄与する理由

理由

レジリエンス強化の中で制震(制振)がどのような役割を果たすのか、過去の地震事例を踏まえて整理します。「繰り返しの揺れにどう備えるか」が、ここでの重要なテーマです。

地震は一度きりではない(本震+余震)

2016年の熊本地震では、規模の大きな前震の後に本震が発生し、さらに多数の余震が続きました。震度7クラスの揺れが短期間に複数回観測されたのは、これまでの地震観測史でも特徴的な出来事でした。

このように、地震は一度で終わるとは限りません。レジリエンス強化を考える上では、本震を乗り越えた後も、余震を含めた繰り返しの揺れに耐え続けられる住まいであることが重要になります。

繰り返しの揺れがもたらす負担の蓄積

耐震基準が想定しているのは、主に「一度の大規模地震で倒壊しない」ことです。これは重要な基準ですが、繰り返しの揺れによる建物へのダメージ蓄積までは完全にはカバーされにくい面があります。

本震で見た目には問題がなくても、内部の接合部や壁内部にダメージが残り、余震でさらに損傷が進むというケースは実際に報告されています。

制震(制振)で揺れのエネルギーを吸収する役割

制震(制振)装置は、建物に伝わる揺れのエネルギーを吸収することで、建物の各部位にかかる負担を受け止める役割を担います。繰り返しの揺れに対しても、エネルギーを吸収し続けることで、ダメージの蓄積を抑える方向に働きます。

「揺れに耐える」耐震と、「揺れを吸収する」制震(制振)を組み合わせることで、一度の地震だけでなく、その後の余震を含めた一連の揺れに対して住まいを守る備えが整っていきます。これが、制震(制振)がレジリエンス強化に寄与する本質的な理由です。

今日からできる住宅レジリエンス強化のステップ

手順

「レジリエンス強化」と聞くと大がかりな話に感じられるかもしれませんが、実際には段階的に進められるものです。知って、確認して、必要に応じて対策を加える——その流れを5つのステップで整理します。

ステップ①:自宅の耐震基準を確認する

まずは自宅がどの耐震基準で建てられているかを確認します。1981年6月1日以降に建築確認を受けていれば新耐震基準、2000年6月1日以降なら2000年基準(現行基準)の対象です。築年数ではなく「建築確認日」で判断する点がポイントです。

ステップ②:耐震診断で現状を把握する

耐震基準だけでなく、建物の劣化状況や構造バランスも耐震性に影響します。多くの自治体では、木造住宅の耐震診断に補助制度を設けているため、まずは自治体に相談して診断を受けることがおすすめです。

ステップ③:必要に応じて耐震補強を行う

診断の結果、耐震性が不足している場合は耐震補強を検討します。特に旧耐震基準(1981年5月以前)の住宅は耐震補強が強く推奨されます。制震(制振)を検討する場合も、まず耐震補強で建物の基本的な強さを確保することが前提になります。自治体の補助金・所得税控除・固定資産税の減額など、活用できる制度も確認しましょう。

ステップ④:制震(制振)を検討する

耐震の土台が整った上で、繰り返しの揺れへの備えとして制震(制振)の導入を検討します。新築のタイミングはもちろん、リフォーム(耐震改修)のタイミングも検討の機会になります。

ステップ⑤:ソフト面の備えも整える

住まいのハード面が整ったら、防災備蓄・地震保険・家族との連絡ルール・近隣とのつながりといったソフト面も並行して整えていきます。ハードとソフトが組み合わさることで、住宅レジリエンスは一段と確かなものになります。

地震対策に完璧はありません。ただ、知ることから始めて、自宅の状態に合わせて一つずつ整えていくことが、住宅レジリエンス強化の現実的なアプローチです。

新築・既存住宅におすすめの制震ダンパー(制振ダンパー)「MER SYSTEM」

制震ダンパー(制振ダンパー)にもさまざまな種類がありますが、ここでは制震(制振)技術の応用製品として評価されている、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(エムイーアールシステム)」をご紹介します。

この制震ダンパー(制振ダンパー)は、油圧式(オイル)ダンパーを知り尽くした世界に誇るヤマハモーターハイドロリックシステムと共同開発した製品で、以下の特徴を持っています。

Cross Type(壁内設置型)

制震ダンパー

①多方向の揺れに対応

柱と梁に設置し、横方向やねじれの揺れ、共振に効果的なタイプです。建物の構造躯体に設置する高性能な制震ダンパー(制振ダンパー)で、特殊オイル(温度不変)を使用しているため、火災の心配もありません。地震はもちろん、強風(台風)・交通振動にも効果を発揮します。 基本的には新築住宅への導入となりますが、Cross Typeであれば、リフォーム(耐震改修)時にも対応可能です。在来工法・2×4工法に対応しています。

②高い耐久性

  • メンテナンスフリー
  • ヤマハ社の特許技術を採用

ヤマハ社との共同開発により、メンテナンスフリーを実現しています。壁の中に設置されているため、基本的に点検やメンテナンスはできません。そのため、制震ダンパー(制振ダンパー)を選ぶ際は、耐久性が重要なポイントとなります。

③高い安全性

  • 大地震から微振動まで様々な揺れを100年間想定した耐久テストをクリア
  • オイル漏れを防ぐ高性能なオイルシールを採用
  • 1棟1棟 最適な配置計画と数値的根拠となる計算書のご提出

④繰り返し地震への耐性

余震を含む複数回の地震にも効果を発揮します。地震の揺れに限らず風による超極低速な揺れや、繰り返し発生する地震にも効果を発揮します。

制震装置

Base Type(基礎設置型)

基礎と土台の間に設置し、1階の床下から効果を発揮するタイプです。横揺れ・縦揺れの両方に対応します。また、電車や大型車等による交通振動にも効果を発揮します。基礎と土台の間に設置する構造上、新築時のみの設置となります。

交通振動に効果のある制震装置

① 多方向・多種類の揺れに対応

  • 「耐震+制震」の相乗効果: 住宅会社様の耐震技術に、地震エネルギーを10〜30%吸収する本製品を組み合わせることで、あらゆる揺れに大きな効果が期待できます 。
  • 従来のパッキンの利点を維持: 従来の樹脂製パッキンと同様の通気(換気)性を確保しながら、地震の揺れや衝撃を吸収するプラスのメリットを備えています 。

② 交通振動(縦揺れ)への圧倒的な効果

  • 不快な微振動を大幅軽減: 線路や幹線道路沿いで問題となる、トラック・電車・新幹線などによる交通振動を大幅に軽減し、快適な住環境を確保します 。
  • 縦揺れへの有効性: 建物へのダメージや住人の心身に影響を与える「縦揺れ」に対しても、基礎下から衝撃を吸収することで優れた効果を発揮します 。

③ 特殊構造による高い安全性と剛性維持

  • 特殊鋼板入りのハイブリッド構造: ゴムの中に特殊鋼板を封入することで、荷重に対するゴムの潰れや、水平方向への過度な変形を抑制します 。
  • 建物の歪みを防止: 振動や衝撃を吸収することで、柱が土台へめり込むのを軽減し、建物の剛性を長期にわたって維持することが可能です 。

④ 100年先を見据えた耐久性と実績

  • メンテナンスフリーの耐久性: 耐久年数100年を誇り、防振性と耐久性に優れた天然ゴムとスチレン・ブタジエンゴムを素材として採用しています 。
  • プロが選ぶ信頼の実績: 開発から23年、5万棟以上の導入実績があり、大手分譲系ハウスメーカーでも快適な住環境を提供するための独自の基準として採用されています 。
交通振動

まとめ:知ることから始める、住宅レジリエンスの強化

住宅レジリエンスの強化とは、住まいのハード・ソフト・コミュニティの3つを整え、災害を受けても生活を速やかに再開できる力を高めることです。中でもハード面——建物そのものの物理的な強さ——が土台となり、その上にソフトやコミュニティの備えが生きてきます。

ハード面の地震対策では、耐震を基本としながら、繰り返しの揺れに対しては制震(制振)で揺れのエネルギーを吸収するという考え方が有効です。耐震が土台、制震(制振)がその上に重ねる備え——この役割分担を理解しておくと、自宅の状況に応じた選択がしやすくなります。

「知れば対策できる」。まずは自宅の耐震基準を確認し、耐震診断で現状を把握することから始めてみてください。その上で、必要な対策を一つずつ重ねていくことで、住宅レジリエンスは着実に高まっていきます。

制震ダンパー(制振ダンパー)の具体的な検討に進みたい方は、MER SYSTEMの資料請求からお気軽にお問い合わせください。ご自宅の状況に合った備えを、一緒に考えていきましょう。

SUPERVISOR 監修者
高橋 治

高橋 治(Osamu Takahashi)

東京理科大学 工学部 建築学科 教授
/博士(工学) /構造設計一級建築士/
構造計算適合判定資格者/建築構造士

1991年、東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社構造計画研究所を経て、現職に至る。専門は建築構造設計、免震・制振技術。
「建物の安全と快適性を、革新的な技術で両立させる」ことを信条に、建築用オイルダンパーや三次元免震システムなど、最先端の耐震・免震技術の研究開発を牽引する第一人者。
日本建築学会賞(技術)や日本免震構造協会協会賞(技術賞)など受賞多数。大学発ベンチャー「株式会社サイエンス構造」の代表も務める。
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