地震対策

割れ残りとは?熊本で10年後に再び大地震が起きた理由と、全国に潜むリスク・住まいの備え

「大きな地震が一度来た土地は、しばらくは大丈夫」——そんな感覚を、どこかで持っていませんでしたか。しかし2026年7月の令和8年熊本地震は、2016年の熊本地震からわずか10年で、同じ地域を再び大きな揺れが襲い得ることを示しました。カギとなるのが、断層の「割れ残り」です。本記事では、割れ残りとは何か、なぜ短い間隔で大地震が繰り返されたのかを政府の地震調査委員会の見解に沿って整理し、全国に潜む同様のリスクと、「断層の動きは止められなくても、建物は変えられる」という住まい側の備えまで解説します。

  • 割れ残りの意味と発生理由
  • 10年後に熊本で地震が起きた訳
  • 全国に潜む断層の危険なリスク
  • 住まいの地震対策と制震の重要性
目次

割れ残りとは?——熊本で10年後に再び大地震が起きた理由

「大きな地震のあとは、エネルギーが放出されたから当分安心」——多くの人がそう感じてきたのではないでしょうか。令和8年熊本地震は、その感覚に見直しを迫る出来事でした。まずはカギとなる「割れ残り」という言葉から整理します。

割れ残りとは——断層帯は「一度に全部」動くとは限らない

割れ残りとは、大地震の際に断層帯全体が一度に破壊されるのではなく、一部の区間がすべらずに「残った」領域を指す言葉です。「活断層帯が動いた」と聞くと、断層帯全体が一気に壊れたような印象を受けますが、実際には、数十キロから100キロを超えるような長い断層帯の場合、1回の地震で動くのはその一部であることが多いのです。動かずに残った区間には、ずれずに蓄えられたエネルギーがそのまま残ります。これが、将来の地震の「種」になり得るのです。

令和8年熊本地震で動いたのは、日奈久断層帯の約30キロ

2016年の熊本地震では、まず日奈久(ひなぐ)断層帯の一部が動き、2日後に隣接する布田川(ふたがわ)断層帯へ破壊が広がりました。日奈久断層帯は全長約81キロで、北から「高野―白旗」「日奈久」「八代海」の3つの区間に分かれています。

そして2026年7月28日、マグニチュード7.1の令和8年熊本地震が発生します。政府の地震調査委員会は発生翌日に臨時会合を開き、観測データを検討した結果、今回活動したのは日奈久断層帯のうち約30キロ——日奈久区間の北東部と高野―白旗区間の一部——だと判断しました。そのうえで委員長は、「重なっているかどうかは精査が必要」と慎重な説明をしつつ、「10年前の地震で割れ残っていた領域が破壊した」との見方を公式に示したのです。なお、今回動いたのも断層帯全体の一部にとどまり、南側にはまだ割れ残りが存在しているとして、引き続き警戒が呼びかけられています。

出典:科学技術振興機構 サイエンスポータル「熊本地震で断層帯30キロ動くも活動は依然活発 まだ「割れ残り」に厳重警戒を」

出典:気象庁「令和8年熊本地震 ポータルサイト」

>関連コラム:地震発生のメカニズムと「命を守る」最新の地震対策とは

なぜ割れ残りは動くのか——応力の変化と、「予測できない」という現実

割れ残りは、なぜ時間を置いて動き出すのでしょうか。そして、次にいつ動くかは分かるのでしょうか。ここでは、その仕組みと、現在の科学の限界を整理します。

大地震が変える、地下の力のバランス

大地震で断層が大きくずれると、周辺の地下にかかる力(応力)のバランスが変化します。この変化した力が、動かずに残った区間や周辺の断層に新たな負荷としてかかり、割れ残り部分の破壊を誘発することがあると考えられています。実際、専門家は「2016年の熊本地震によって日奈久断層帯沿いの応力に変化が生じ、地震活動が活発になっていた範囲の中で今回の地震が起きた」と解説しています。そのうえで、10年前の地震と今回の地震を一連の活動として捉える必要があると指摘しています。

千年単位の現象が「10年」で——今回が異例な理由

ここで押さえておきたいのは、時間の物差しです。ひとつの活断層が大地震を起こす間隔は、一般に千年から数万年単位と、とても長いとされています。その物差しで見ると、同じ断層帯で10年後に再び大地震が起きた今回は、きわめて短い間隔だったといえます。これは、割れ残りという「すでにエネルギーをためた区間」が隣に残っていたからこそ起こり得たことであり、「大きな地震が来たから、しばらくは大丈夫」という感覚が通用しない場合があることを示しています。

「いつ来るか」は分からない、それでも警戒は続く

一方で、正確に知っておきたいこともあります。現在の科学では、地下深くの断層のずれを直接観測することはできません。そのため、「割れ残りがあるから次が来る」「いつ来る」と断定することは不可能とされています。それでも専門家は、残された割れ残りが将来大きな地震を引き起こす可能性は十分あるとして、地震活動や地殻変動の継続的な監視と警戒を呼びかけています。私たちにとって現実的なのは、予測を待つことではなく、「予測できない」という前提で備えておくことなのです。

出典:科学技術振興機構 サイエンスポータル「熊本地震で断層帯30キロ動くも活動は依然活発 まだ「割れ残り」に厳重警戒を」

>関連コラム:大地震は起こるのでしょうか

割れ残りは熊本だけの話ではない——全国に潜むリスク

では、割れ残りのリスクは熊本に限った話なのでしょうか。答えは「いいえ」です。日本の活断層の調査状況を踏まえると、これはどの地域にも関わる話だと分かります。

全国約2,000の活断層——調べ切れているのはごく一部

全国には約2,000の活断層があるとされています。しかし、過去にいつ・どの区間が動いたのかという活動履歴まで詳しく調べられている断層は、ごく一部にとどまります。つまり、どの断層に割れ残りがあるのかを網羅的に把握することは、現状では難しいのです。その意味で、割れ残りを原因とする地震は、理論上、日本のどの地域でも起こり得るリスクだといえます。

また、活断層の地震発生確率は、30年以内で数%でも「最も高いランク」(Sランク=3%以上)に位置づけられます。海溝型の地震と比べて数字が小さく見えますが、それは地震の間隔が桁違いに長いためで、確率が低く見えることは、地震が起きないことを意味しません。今回の日奈久断層帯が、まさにそのことを示しました。

阪神・淡路大震災にも「割れ残り」——各地で指摘されるリスク

実際に、割れ残りが警戒されている場所は各地にあります。

代表例が、1995年の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)を引き起こした六甲・淡路島断層帯です。このとき大きくエネルギーを解放したのは、野島断層が地表に現れた淡路島側の区間で、大阪府から淡路島北部へ続く全長約71キロの「六甲山地南縁-淡路島東岸区間」の活動は、この区間で起こり得る規模よりひとまわり小さかったと評価されています。つまり、あの阪神・淡路大震災にも割れ残りがあるのです。地震調査研究推進本部はこの区間で、マグニチュード7.8程度の地震が起こる可能性を「高い」(最も高いSランク)と評価しており、震災から30年余りを経たいまも警戒が続いています。

福岡県の警固(けご)断層帯も同様です。2005年の福岡県西方沖地震では、警固断層帯のうち北西部(海側)が動きましたが、福岡市中心部から筑紫野市に至る南東部(陸側)は動かずに残りました。この南東部は最も高いランクに評価されており、専門家が割れ残りとして警戒を呼びかけています。また、2024年の能登半島地震のあとも、周辺で動いていない区間の存在が指摘されています。

断層のずれ方にも種類がある

なお、活断層にはずれ方の違いによる種類があります。水平方向にずれ動く「横ずれ断層」(令和8年熊本地震はこのタイプでした)、押し合う力で片側がのし上がる「逆断層」、引っ張る力で片側がずり落ちる「正断層」などです。ずれ方によって揺れ方や被害の現れ方は変わりますが、共通しているのは、どのタイプでも「一度大きな地震が起きた土地だから、もう安心」とは言えないということです。

出典:地震調査研究推進本部「主要活断層の長期評価結果」

>関連コラム:【警告】「耐震基準クリアで安心」の罠!新旧の違いと真の地震対策

断層の動きは止められなくても、建物は変えられる——制震ダンパー(制振ダンパー)

割れ残りがいつ・どこで動くかは、専門家にも予測できません。だからこそ、個人ができる現実的な備えは「建物側」にあります。ここでは、その考え方の順序を整理します。

基準は強化されてきた——それでも「いまの家」は自分で備える

住宅の耐震基準は、大地震のたびに強化されてきました。1981年には新耐震基準へと大きく改正され、2000年には木造住宅の接合部などに関する基準が強化、さらに2025年4月にも建築基準法の改正が行われています。ただし、基準が強化されても、すでに建っている家が自動的に強くなるわけではありません。いま住んでいる家をどう備えるかは、住まい手が自分で選ぶしかないのです。

繰り返す揺れのエネルギーを吸収する制震ダンパー(制振ダンパー)

そこで検討したいのが、制震ダンパー(制振ダンパー)です。柱や梁といった建物の構造体に直接設置し、揺れのたびにそのエネルギーを吸収して、建物の変形やダメージの蓄積を防ぐ装置です。熊本のように大きな揺れが繰り返された地域も、これから割れ残りの活動が心配される地域も、共通するのは「揺れは1回で終わらないかもしれない」ということ。製品の中には、余震を含めて繰り返し続く揺れにも効果を発揮し続けるものがあり、こうした備えと相性の良い選択肢といえます。

耐震という土台と、リフォーム(耐震改修)という機会

順序として大切なのは、まず耐震診断で建物の現状を知り、耐震という土台を確かめたうえで、制震(制振)を組み合わせるという考え方です。既存の住宅では、リフォーム(耐震改修)にあわせて導入できる製品もあるため、住まいに手を入れる機会があれば、あわせて検討してみるとよいでしょう。どの位置に何本設置すれば効果的かは建物ごとに異なるため、計算にもとづく配置計画を示してくれるかどうかも、相談先を見極めるポイントです。

>関連コラム:耐震基準の変遷を徹底解説|新耐震や等級3でも「制震(制振)」が検討される理由

割れ残りが気になったら——確認・診断・相談の3ステップ

「うちの近くの断層は大丈夫だろうか」と気になったら、次の3つのステップで動いてみましょう。不安なまま立ち止まる必要はありません。まずは知ることからです。

ステップ①:自分の地域の断層帯と評価を確認する

地震調査研究推進本部が公表している活断層の長期評価や、国・自治体のハザードマップで、自分の住む地域にどんな断層帯があり、どのランクに評価されているかを確認してみましょう。断層の位置と評価を知ることが、備えの出発点になります。

ステップ②:「もう大丈夫」を手放し、耐震診断で現状把握

「一度大きな地震が来たから、当分は大丈夫」という思い込みは、いったん手放しましょう。特に、過去に大きな揺れを経験した住宅や、旧耐震基準の時代に建てられた住宅では、耐震診断・建物調査を通じて、今の住まいの耐震性能を客観的に把握することをおすすめします。目に見えないダメージや弱点は、専門家の目でこそ見つかります。

ステップ③:リフォームの機会に、対策を一貫相談

診断で弱点が分かったら、リフォーム(耐震改修)の機会に、制震ダンパー(制振ダンパー)を含めた対策を検討しましょう。耐震診断から補強設計、施工まで一貫して相談できる専門会社に依頼すると、遠回りせずに進められます。建物ごとの計算や配置計画といった根拠を示してくれる会社なら、より安心です。

>関連コラム:制震ダンパー(制振ダンパー)は後付けできる?既存住宅で検討する際の注意点と考え方

新築・既存住宅におすすめの制震ダンパー(制振ダンパー)「MER SYSTEM」

制震ダンパー「MER SYSTEM Cross Type」の製品ポスター。日本制震システム株式会社とヤマハモーターハイドロリックシステム株式会社の共同開発。「備えることは、守ること。」

制震ダンパー(制振ダンパー)にもさまざまな種類がありますが、ここでは制震(制振)技術の応用製品として評価されている、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(エムイーアールシステム)」をご紹介します。

この制震ダンパー(制振ダンパー)は、油圧式(オイル)ダンパーを知り尽くした世界に誇るヤマハモーターハイドロリックシステムと共同開発した製品で、以下の特徴を持っています。

Cross Type(壁内設置型)

制震ダンパー

①多方向の揺れに対応

柱と梁に設置し、横方向やねじれの揺れ、共振に効果的なタイプです。建物の構造躯体に設置する高性能な制震ダンパー(制振ダンパー)で、特殊オイル(温度不変)を使用しているため、火災の心配もありません。地震はもちろん、強風(台風)・交通振動にも効果を発揮します。 基本的には新築住宅への導入となりますが、Cross Typeであれば、リフォーム(耐震改修)時にも対応可能です。在来工法・2×4工法に対応しています。

②高い耐久性

  • メンテナンスフリー
  • ヤマハ社の特許技術を採用

ヤマハ社との共同開発により、メンテナンスフリーを実現しています。壁の中に設置されているため、基本的に点検やメンテナンスはできません。そのため、制震ダンパー(制振ダンパー)を選ぶ際は、耐久性が重要なポイントとなります。

③高い安全性

  • 大地震から微振動まで様々な揺れを100年間想定した耐久テストをクリア
  • オイル漏れを防ぐ高性能なオイルシールを採用
  • 1棟1棟 最適な配置計画と数値的根拠となる計算書のご提出

④繰り返し地震への耐性

余震を含む複数回の地震にも効果を発揮します。地震の揺れに限らず風による超極低速な揺れや、繰り返し発生する地震にも効果を発揮します。

制震装置

Base Type(基礎設置型)

基礎と土台の間に設置し、1階の床下から効果を発揮するタイプです。横揺れ・縦揺れの両方に対応します。また、電車や大型車等による交通振動にも効果を発揮します。基礎と土台の間に設置する構造上、新築時のみの設置となります。

交通振動に効果のある制震装置

① 多方向・多種類の揺れに対応

  • 「耐震+制震」の相乗効果: 住宅会社様の耐震技術に、地震エネルギーを10〜30%吸収する本製品を組み合わせることで、あらゆる揺れに大きな効果が期待できます 。
  • 従来のパッキンの利点を維持: 従来の樹脂製パッキンと同様の通気(換気)性を確保しながら、地震の揺れや衝撃を吸収するプラスのメリットを備えています 。

② 交通振動(縦揺れ)への圧倒的な効果

  • 不快な微振動を大幅軽減: 線路や幹線道路沿いで問題となる、トラック・電車・新幹線などによる交通振動を大幅に軽減し、快適な住環境を確保します 。
  • 縦揺れへの有効性: 建物へのダメージや住人の心身に影響を与える「縦揺れ」に対しても、基礎下から衝撃を吸収することで優れた効果を発揮します 。

③ 特殊構造による高い安全性と剛性維持

  • 特殊鋼板入りのハイブリッド構造: ゴムの中に特殊鋼板を封入することで、荷重に対するゴムの潰れや、水平方向への過度な変形を抑制します 。
  • 建物の歪みを防止: 振動や衝撃を吸収することで、柱が土台へめり込むのを軽減し、建物の剛性を長期にわたって維持することが可能です 。

④ 100年先を見据えた耐久性と実績

  • メンテナンスフリーの耐久性: 耐久年数100年を誇り、防振性と耐久性に優れた天然ゴムとスチレン・ブタジエンゴムを素材として採用しています 。
  • プロが選ぶ信頼の実績: 開発から23年、5万棟以上の導入実績があり、大手分譲系ハウスメーカーでも快適な住環境を提供するための独自の基準として採用されています 。
交通振動

まとめ:地震は止められなくても、住まいは変えられる

令和8年熊本地震は、一度大きな地震が起きた土地でも、「割れ残り」によって短い間隔で再び大地震が起こり得ることを示しました。そして割れ残りのリスクは、熊本だけの話ではありません。断層がいつ動くかは、現在の科学でも予測できず、コントロールもできません。しかし、建物の揺れにくさは、いまからでも高められます。まずは自分の地域の断層と住まいの耐震性能を確認することから始めて、リフォーム(耐震改修)の機会には、揺れのエネルギーを吸収する制震ダンパー(制振ダンパー)という選択肢も含めて、専門家に相談してみてください。「MER SYSTEM」の詳しい資料は、日本制震システム株式会社までお気軽にご請求ください。

SUPERVISOR 監修者
高橋 治

高橋 治(Osamu Takahashi)

東京理科大学 工学部 建築学科 教授
/博士(工学) /構造設計一級建築士/
構造計算適合判定資格者/建築構造士

1991年、東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社構造計画研究所を経て、現職に至る。専門は建築構造設計、免震・制振技術。
「建物の安全と快適性を、革新的な技術で両立させる」ことを信条に、建築用オイルダンパーや三次元免震システムなど、最先端の耐震・免震技術の研究開発を牽引する第一人者。
日本建築学会賞(技術)や日本免震構造協会協会賞(技術賞)など受賞多数。大学発ベンチャー「株式会社サイエンス構造」の代表も務める。
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