リノベーションは耐震見直しの絶好の機会|進め方と「耐震+制震(制振)」という考え方

「間取りを変えたい」「水回りを新しくしたい」——そんなきっかけでリノベーションを検討し始めたら、ふと「この家、地震は大丈夫なんだろうか」という不安がよぎった。そんな方は少なくありません。実際、リノベーション経験者からは「内装だけでなく、耐震のことも一緒に考えればよかった」という声が聞かれます。結論からいえば、壁や床を開けるリノベーションのタイミングこそ、耐震について考える一番良い機会です。本記事では、その理由と一般的な耐震改修の内容、そして「倒壊を防ぐ耐震」に「繰り返しの揺れに備える制震(制振)」を組み合わせるという一歩進んだ考え方まで解説します。
この記事で解決できるお悩み
- リノベが耐震見直しの好機である理由
- 耐震・制震・免震の役割の違い
- 制震ダンパーを取り入れる進め方
- 繰り返し地震に備える制震の重要性
なぜリノベーションが耐震見直しの「絶好の機会」なのか
「リノベーションと耐震は別の話」と思われがちですが、実はこの2つは切っても切れない関係にあります。壁や床を開けるタイミングには、ほかにはない利点があるからです。まずはその理由から見ていきましょう。
スケルトンリノベーションなら、骨組みを直接確認できる
リノベーションの中でも、構造体(柱・梁・基礎など)を残して内装や設備を一新する工事は「スケルトンリノベーション」と呼ばれます。壁や床を解体すると、普段は仕上げ材の裏に隠れている建物の骨組みがあらわになるため、専門家が柱や梁、接合部の状態を直接目で確認できます。図面や外からの調査だけでは分かりにくい、金物の不足や部材の傷み、シロアリの被害といった弱点も、このタイミングなら見つけやすいのです。
単独工事は「壊して戻す」が二重になりがち
もうひとつの理由が、工事の合理性です。耐震改修だけを単独で行おうとすると、いったん仕上がっている壁や床を壊し、工事のあとに元どおりに戻す必要があります。一方、リノベーションと同時に行えば、解体と復旧を1回にまとめられます。「どうせ壁を開けるなら、このタイミングで耐震も」という考え方は、手間の面でも工事の段取りの面でも、とても合理的なのです。
まずは自宅の基準を確認——1981年・2000年・2025年という節目
では、自分の家に耐震の見直しが必要かどうかは、どう判断すればよいのでしょうか。第一歩は、自宅がいつの耐震基準で建てられたかの確認です。耐震基準は大地震のたびに強化されてきましたが、大きな節目は2つあります。1981年の新耐震基準への改正と、2000年の木造住宅に関する基準の強化(接合部の金物や耐力壁の配置バランスの明確化)、そして2025年4月の建築基準法改正です。1981年以前の旧耐震基準の住宅はもちろん、1981年から2000年の間に建てられた住宅も、現在の基準とは異なる部分があるため、リノベーションを機に一度確認しておく価値があります。なお、新旧の区分は完成した日ではなく建築確認の日付で判断されるため、確認済証などの書類の日付を見るのがポイントです。
>関連コラム:新耐震基準はいつから?適用時期の確認方法と木造住宅の耐震・制震対策
一般的な耐震改修で行われること——壁・基礎・金物
では、耐震改修では実際にどのような工事が行われるのでしょうか。代表的なメニューは「壁」「基礎」「金物」の3つに整理できます。それぞれの役割を見てみましょう。
耐力壁の追加と、配置バランスの見直し
耐力壁とは、地震の横からの力に抵抗する壁のことで、筋かいや構造用合板などで構成されます。耐震改修では、この耐力壁を追加して建物の強度を高めるとともに、配置のバランスも見直します。壁の量が足りていても、配置に偏りがあると建物がねじれるように揺れやすくなるためです。量とバランスの両方を整えることが、壁の工事のポイントになります。
基礎のひび割れ補修
建物の重さと地震の力を地面に伝える基礎も、重要な確認ポイントです。老朽化した基礎にひび割れがある場合は補修を行い、状態によっては基礎自体の補強を検討します。上部の構造をどれだけ強くしても、それを支える基礎が傷んでいては力を発揮できません。
ホールダウン金物などによる接合部の強化
大きな揺れでは、柱が土台や基礎から引き抜かれるような力が働きます。これを防ぐのが、柱と基礎(土台)をつなぐホールダウン金物をはじめとした接合金物です。接合部の金物による強化は、2000年の基準で明確化された考え方で、木造住宅の耐震改修における重要なメニューになっています。金物は仕上げ材の裏に隠れて外からは見えないため、壁を開けるリノベーションのタイミングは、その確認と補強の好機でもあります。ここまで見てきた壁・基礎・金物の工事は、いずれも大きな地震で建物が倒壊しないことを目的とした、命を守るための基本的な対策です。
「壁を固める」だけで安心?——耐震・制震(制振)・免震の役割の違い

耐震改修で建物を強くすれば、それで万全なのでしょうか。ここで一度、地震対策の3つの考え方——耐震・制震(制振)・免震——の役割の違いを整理しておきましょう。一般的な耐震改修の解説では、あまり語られない視点があります。
耐震——硬く強くして倒壊を防ぐ。ただし揺れは伝わる
耐震は、建物を硬く強くすることで、大きな揺れに耐えて倒壊を防ぐ考え方です。命を守るための土台であり、最優先で確保すべきものであることは間違いありません。ただし、知っておきたい特徴があります。それは、耐震が揺れに「耐える」考え方であるため、揺れのエネルギー自体はほぼそのまま建物に伝わってしまうという点です。そのため、大地震を1回耐えられたとしても、建具の歪みや壁のひび割れといったダメージが建物に蓄積したり、余震など繰り返しの揺れを受けるうちに、耐震性能が徐々に低下していく可能性があります。
制震(制振)——エネルギーを吸収し、繰り返しに強い
一方、制震(制振)は、ダンパーなどの装置が揺れのエネルギーを吸収することで、建物の変形やダメージの蓄積を防ぐ考え方です。揺れを受け止めるたびに装置が働き続けるため、繰り返しの地震に強いのが大きな特徴です。
免震——効果は高いが、戸建てリノベーションでは採用例が少ない
免震は、建物と地盤を切り離すことで、揺れを建物に伝えないようにする方法です。効果の高い対策ですが、大掛かりな装置と工事が必要になるため、一般的な戸建て住宅のリノベーションで採用される例は多くありません。
「倒壊を防ぐ」と「繰り返しに備える」はセットで考える
ここで大切なのは、耐震と制震(制振)は、どちらが優れているかという関係ではなく、役割が異なるという点です。倒壊を防ぐのが耐震、繰り返しの揺れによるダメージの蓄積を防ぐのが制震(制振)。つまり、耐震という土台の上に制震(制振)を組み合わせることで、それぞれの役割を補い合えるのです。「壁を固めて終わり」ではなく、両方をセットで考えることが、これからの住まいの備え方だといえます。
>関連コラム:耐震・免震・制震どれがいい?後悔しない「地震対策」の選び方
リノベーションだからこそ計画できる——制震ダンパー(制振ダンパー)という選択肢
制震(制振)を住まいに取り入れるための装置が、制震ダンパー(制振ダンパー)です。そしてリノベーションのタイミングは、この装置を計画するうえでも大きな意味を持ちます。その理由を見ていきましょう。
構造があらわになる今だから、計画と一体で組み込める
制震ダンパー(制振ダンパー)は、柱や梁といった建物の構造体に設置する装置です。壁や床を開けて構造があらわになるリノベーションのタイミングであれば、耐震改修の補強計画と一体で、どの位置に設置するかを検討しやすくなります。実際、制震ダンパー(制振ダンパー)は新築時の設置が基本となるものの、リフォーム(耐震改修)にあわせて導入できる製品もあり、耐震の工事と制震(制振)の計画を、同じテーブルの上で進められるのがこの機会の価値です。
「倒壊しない家」から「損傷が広がりにくい家」へ
耐震改修のゴールを「倒壊しない家」で終わらせず、もう一歩進めて「繰り返しの揺れでも損傷が広がりにくい家」を目指す——これが、耐震に制震(制振)を組み合わせる備え方です。大きな地震のあとには余震が続くことも珍しくありません。製品の中には、余震を含めて繰り返し続く揺れにも、そのたびにエネルギーを吸収して効果を発揮し続けるものがあります。せっかく費用と時間をかけてつくり直す住まいだからこそ、長く安心が続く形を目指したいところです。なお、壁の中に設置する制震ダンパー(制振ダンパー)は導入後の定期的な点検が難しいため、装置自体の「耐久性」も選定時の重要な視点となります。
順序は「診断→耐震→制震(制振)」
進め方の順序も大切です。まず耐震診断で建物の現状を把握し、耐震という土台を確かなものにしたうえで、制震(制振)を組み合わせる——この順番は変わりません。また、どの位置に何本設置すれば効果的かは建物ごとに異なるため、計算にもとづく配置計画を示してくれるかどうかも、相談先を見極めるポイントです。
>関連コラム:制震ダンパー(制振ダンパー)は後付けできる?既存住宅で検討する際の注意点と考え方
リノベーションで耐震・制震(制振)を検討するときの進め方

最後に、実際の進め方を3つのステップで整理します。ポイントは「計画段階から」です。工事が始まってからではなく、間取りを考えるのと同じテーブルで、耐震も一緒に考えていきましょう。
ステップ①:耐震診断で基準と現状を客観把握
まずは、自宅が新耐震基準か旧耐震基準か、そして現在の耐震性能がどの程度かを、耐震診断を通じて客観的に把握します。この情報は、リノベーション全体の計画を左右する前提条件になります。思い込みや築年数の印象ではなく、診断結果という根拠から出発しましょう。
ステップ②:計画段階から「間取り+耐震・制震(制振)」で相談
間取りの変更は、壁の位置や量に直結します。つまり、間取りの計画と耐震の計画は、本来切り離せないものです。設計の初期段階から、間取りや設備の希望とあわせて、耐震・制震(制振)の両面を含めて相談しましょう。特に壁を減らす間取り変更を考えている場合は、減らした分の強度をどう確保するかまで含めて計画することが大切です。あとから耐震の話を持ち出すと、設計のやり直しが必要になることもあります。
ステップ③:診断から内装まで一貫相談で手戻りを避ける
耐震診断から補強設計、制震ダンパー(制振ダンパー)の設置、そして内装工事まで、一貫して相談できる専門会社に依頼すると、工事の手戻りを避けてスムーズに進められます。建物ごとの計算や配置計画といった根拠を示してくれる会社なら、より安心です。
>関連コラム:旧耐震基準はいつから?新耐震との違い・リスクと安全に住み続けるための対策
新築・既存住宅におすすめの制震ダンパー(制振ダンパー)「MER SYSTEM」

制震ダンパー(制振ダンパー)にもさまざまな種類がありますが、ここでは制震(制振)技術の応用製品として評価されている、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(エムイーアールシステム)」をご紹介します。
この制震ダンパー(制振ダンパー)は、油圧式(オイル)ダンパーを知り尽くした世界に誇るヤマハモーターハイドロリックシステムと共同開発した製品で、以下の特徴を持っています。
Cross Type(壁内設置型)

①多方向の揺れに対応
柱と梁に設置し、横方向やねじれの揺れ、共振に効果的なタイプです。建物の構造躯体に設置する高性能な制震ダンパー(制振ダンパー)で、特殊オイル(温度不変)を使用しているため、火災の心配もありません。地震はもちろん、強風(台風)・交通振動にも効果を発揮します。 基本的には新築住宅への導入となりますが、Cross Typeであれば、リフォーム(耐震改修)時にも対応可能です。在来工法・2×4工法に対応しています。
②高い耐久性
- メンテナンスフリー
- ヤマハ社の特許技術を採用
ヤマハ社との共同開発により、メンテナンスフリーを実現しています。壁の中に設置されているため、基本的に点検やメンテナンスはできません。そのため、制震ダンパー(制振ダンパー)を選ぶ際は、耐久性が重要なポイントとなります。
③高い安全性
- 大地震から微振動まで様々な揺れを100年間想定した耐久テストをクリア
- オイル漏れを防ぐ高性能なオイルシールを採用
- 1棟1棟 最適な配置計画と数値的根拠となる計算書のご提出
④繰り返し地震への耐性
余震を含む複数回の地震にも効果を発揮します。地震の揺れに限らず風による超極低速な揺れや、繰り返し発生する地震にも効果を発揮します。

Base Type(基礎設置型)
基礎と土台の間に設置し、1階の床下から効果を発揮するタイプです。横揺れ・縦揺れの両方に対応します。また、電車や大型車等による交通振動にも効果を発揮します。基礎と土台の間に設置する構造上、新築時のみの設置となります。

① 多方向・多種類の揺れに対応
- 「耐震+制震」の相乗効果: 住宅会社様の耐震技術に、地震エネルギーを10〜30%吸収する本製品を組み合わせることで、あらゆる揺れに大きな効果が期待できます 。
- 従来のパッキンの利点を維持: 従来の樹脂製パッキンと同様の通気(換気)性を確保しながら、地震の揺れや衝撃を吸収するプラスのメリットを備えています 。
② 交通振動(縦揺れ)への圧倒的な効果
- 不快な微振動を大幅軽減: 線路や幹線道路沿いで問題となる、トラック・電車・新幹線などによる交通振動を大幅に軽減し、快適な住環境を確保します 。
- 縦揺れへの有効性: 建物へのダメージや住人の心身に影響を与える「縦揺れ」に対しても、基礎下から衝撃を吸収することで優れた効果を発揮します 。
③ 特殊構造による高い安全性と剛性維持
- 特殊鋼板入りのハイブリッド構造: ゴムの中に特殊鋼板を封入することで、荷重に対するゴムの潰れや、水平方向への過度な変形を抑制します 。
- 建物の歪みを防止: 振動や衝撃を吸収することで、柱が土台へめり込むのを軽減し、建物の剛性を長期にわたって維持することが可能です 。
④ 100年先を見据えた耐久性と実績
- メンテナンスフリーの耐久性: 耐久年数100年を誇り、防振性と耐久性に優れた天然ゴムとスチレン・ブタジエンゴムを素材として採用しています 。
- プロが選ぶ信頼の実績: 開発から23年、5万棟以上の導入実績があり、大手分譲系ハウスメーカーでも快適な住環境を提供するための独自の基準として採用されています 。

まとめ:壁を開ける今こそ、「耐震+制震(制振)」を

リノベーションは、壊さなければ見えない建物の中身と向き合える貴重な機会です。壁や床を開けるこのタイミングなら、耐震改修と制震(制振)の計画を一体で進められます。「倒壊しない家」にするための耐震改修に加えて、「繰り返しの揺れでも損傷が広がりにくい家」にするための制震ダンパー(制振ダンパー)も選択肢に入れることで、より長く安心して住み続けられる住まいになります。リノベーションを検討し始めた今こそ、まずは耐震診断から始めて、耐震と制震(制振)の両方を専門家に相談してみてください。「MER SYSTEM」の詳しい資料は、日本制震システム株式会社までお気軽にご請求ください。
- SUPERVISOR 監修者
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高橋 治(Osamu Takahashi)
東京理科大学 工学部 建築学科 教授
/博士(工学)
/構造設計一級建築士/
構造計算適合判定資格者/建築構造士 -
1991年、東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社構造計画研究所を経て、現職に至る。専門は建築構造設計、免震・制振技術。
「建物の安全と快適性を、革新的な技術で両立させる」ことを信条に、建築用オイルダンパーや三次元免震システムなど、最先端の耐震・免震技術の研究開発を牽引する第一人者。
日本建築学会賞(技術)や日本免震構造協会協会賞(技術賞)など受賞多数。大学発ベンチャー「株式会社サイエンス構造」の代表も務める。


