住まいづくり

吹き抜けの耐震性は低い?不利になりやすい理由と、開放感を諦めないための設計・制震(制振)

開放的なリビングや明るい室内に憧れて吹き抜けのある家を検討し始めたのに、「吹き抜けは地震に弱い」という情報を目にして不安になっていませんか。結論からいえば、この噂はまったくの誤りではなく、構造的な根拠があります。一方で、正しく設計すれば十分に対策できるものでもあります。本記事では、吹き抜けが耐震性で不利になりやすい理由を構造の仕組みから解説したうえで、耐震等級3を実現する設計の考え方、そして開放感を諦めないための「耐震+制震(制振)」という備え方まで、順を追って整理します。憧れを諦める前に、まず仕組みを理解することから始めましょう。

  • 吹き抜けが地震に弱い理由
  • 耐震等級3を実現する設計法
  • 繰り返しの揺れに対する課題
  • 開放感を保つ制震ダンパー
目次

「吹き抜けは地震に弱い」といわれる理由——構造の仕組みから

「吹き抜けは地震に弱い」という話には、実は構造的な根拠があります。ただし、それは吹き抜けそのものが悪いという意味ではありません。まずは、何がどう不利になるのかを正確に理解しましょう。

床がなくなる=「水平構面」が欠ける

建物は、地震の横方向の力を、床や屋根という「面」で受け止めて、耐力壁に伝えています。この面を「水平構面」と呼びます。建物を箱にたとえると、床は箱のフタのような存在です。フタのない箱がゆがみやすいように、床が欠けると建物もゆがみやすくなります。吹き抜けは、2階の床の一部を取り去ってつくる間取りですから、水平構面にぽっかりと欠けた部分が生まれることになります。すると、その部分では力の伝達が弱くなり、建物が一体となって揺れに抵抗しにくくなるのです。これが、吹き抜けが構造上不利になりやすい第一の理由です。

開放的な間取り・大きな窓とセットで、壁も不足しやすい

もうひとつの理由が、壁の不足です。吹き抜けは、リビングの大空間化や、採光のための大きな窓・高窓とセットで計画されることが多いため、結果として、地震の力に抵抗する耐力壁として使える壁の面積そのものが不足しやすくなります。つまり、吹き抜けのある家では、床(水平構面)と壁(耐力壁)の両方が減りやすい——これが「地震に弱い」といわれることの正体です。

悪いのは吹き抜けではなく、「床や壁が減ること」

ここで大切なのは、原因の切り分けです。問題なのは吹き抜けという空間そのものではなく、床や壁が減ることで生じる構造上の弱点に他なりません。当然、吹き抜けが大きくなるほど床の欠けも大きくなるため、大空間になるほどより慎重な構造検討が求められます。裏を返せば、減った床と壁をどう補うかを設計で解決できれば、吹き抜けのある家でも耐震性は確保できるということです。次の章で、その方法を見ていきましょう。

>関連コラム:建物倒壊のメカニズムとは?地震から命を守る3つの脅威と対策

吹き抜けでも耐震等級3は実現できる——設計でカバーする発想

結論からいえば、吹き抜けがあるからといって、それだけで耐震性の低い家になるとは限りません。適切な設計と構造計算を行えば、最高等級である耐震等級3の取得も可能です。ここでは、実務で使われる考え方を紹介します。

耐震等級とは——品確法にもとづく任意の評価制度

まず前提として、耐震等級とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)にもとづく住宅性能表示制度の評価項目のひとつで、等級1から等級3まであり、等級3が最高等級です。等級1は建築基準法で求められるレベル、等級2・3はそれを上回る性能を示します。この制度は任意のため、どの等級を目指して設計するかは、建て主と住宅会社の考え方によって変わります。だからこそ、後述する「会社選び」が重要になるのです。

設計でカバーする3つの考え方

吹き抜けのある家で耐震性を確保するために、実務でよく使われる考え方は次の3つです。1つ目は、吹き抜けの周囲に耐力壁をバランスよく配置すること。壁は量だけでなく、配置の偏りのなさが重要です。2つ目は、吹き抜け部分以外の床を「剛床」と呼ばれる面剛性の高い工法——厚い構造用合板を梁に直接留め付けるなどして、床全体をひとつの固い面として働かせるつくり——にして、残った水平構面をしっかり固めること。3つ目は、吹き抜けの広さを6〜8畳程度までにとどめること(※適切な広さは建物全体のバランスによって変わります)。こうした工夫を構造計算で確かめながら設計すれば、開放感と耐震性は両立できます。2025年4月の建築基準法改正により、多くの木造2階建て住宅でも確認申請時に構造関係書類の提出が義務化されましたが、詳細な構造計算(許容応力度計算など)までは法律上義務付けられない場合が多いため、計算によって確認しながら進めること自体にも大きな価値があります。

等級2・3で初めて「床の強さ」がチェックされる

そして、吹き抜けを検討する方にぜひ知っておいてほしい、制度上の違いがあります。建築基準法で最低限求められる壁量などの検討では、床の強さ(水平構面)そのものは評価項目に含まれていません。一方、耐震等級2・3の評価では、「床倍率」と呼ばれる床の強さの確認が必要になります。吹き抜けの構造上の弱点は、まさにこの床にあります。だからこそ、吹き抜けのある家では、耐震等級2・3を基準に設計を進める会社を選ぶことが、安心につながるのです。

出典:国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律」

設計で対策しても残る、「繰り返しの揺れ」への視点

では、耐震等級3の吹き抜けの家なら、もう何も心配はいらないのでしょうか。ここで、もうひとつ知っておきたい視点があります。「一度の大きな地震」と「繰り返しの揺れ」は、別の問題だということです。

等級3でも「揺れが伝わる」ことは変わらない

耐力壁の配置や床剛性の工夫は、建物を硬く強くして、大きな揺れに耐えて倒壊を防ぐ「耐震」の考え方にもとづく対策です。命を守るための土台として最優先で確保すべきものですが、揺れに「耐える」考え方であるため、揺れのエネルギーが建物に伝わること自体は変わりません。これは、等級がいくつであっても共通する耐震の性質です。

壁や床が少ない分、蓄積の影響を受けやすい側面

そのうえで、吹き抜けのある住宅ならではの事情があります。開放感を優先して壁や床の量を絞った設計になりやすい分、揺れの力を受け持つ部材の一本一本、一枚一枚の負担は相対的に大きくなりがちです。繰り返しの地震を受けるうちに、建具の歪みや壁のひび割れといったダメージが少しずつ蓄積していく可能性があり、その影響を受けやすい側面があるのです。

「設計上の性能」と「住んでからの体感・蓄積」は別の視点

つまり、耐震等級は着工前の「設計上の性能」を示すものであり、住み始めてからの揺れの体感や、小さなダメージの積み重ねは、それとは別の視点で考える必要があります。等級という土台をしっかり確保したうえで、「その先」の備えとして何ができるか。次の章では、その答えとなる選択肢を紹介します。

>関連コラム:【警告】「耐震基準クリアで安心」の罠!新旧の違いと真の地震対策

開放感を諦めないための選択肢——制震ダンパー(制振ダンパー)

「もっと壁を増やせば安心だけれど、開放感が失われる」「かといって、不安なまま住むのも嫌だ」——そんな二択で悩む必要はありません。耐震という土台の上に組み合わせる、もうひとつの選択肢があるからです。ここでは、その考え方と特徴を紹介します。

「開放感を削る」か「我慢する」かの二択ではない

その選択肢が、制震ダンパー(制振ダンパー)です。柱や梁といった建物の構造体に設置し、揺れのたびにそのエネルギーを吸収して、建物の変形やダメージの蓄積を防ぐ装置です。耐力壁を増やす方向だけで開放感との綱引きに悩むのではなく、耐震(等級)という土台の上に、揺れのエネルギーを吸収する仕組みを足す——という考え方で、備えの幅は大きく広がります。

壁の中に設置するタイプなら、開放的な間取りと両立しやすい

「装置を足すと、せっかくの開放感が損なわれるのでは」と心配になるかもしれません。しかし、製品の中には壁の中に設置するタイプがあり、吹き抜けのように壁や床の面積をしぼりたい間取りとも両立しやすくなっています。空間のデザインや窓からの光を損なわずに、地震への備えを一段階引き上げられるのは、吹き抜けの家にとって大きな利点です。

繰り返しの揺れにも効果を発揮し続ける製品がある

さらに、制震ダンパーのなかには、余震など繰り返し続く揺れにも、そのたびにエネルギーを吸収して効果を発揮し続けるものがあります。前章で見た「繰り返しの揺れによる蓄積」という吹き抜けの家の課題に、正面から応える特徴です。新築の設計段階から計画すれば、耐力壁の配置計画と一体で検討できます。どの位置に何本設置すれば効果的かは建物ごとに異なるため、計算にもとづく配置計画を示してくれる会社に相談しましょう。

>関連コラム:制震(制振)とは?耐震・免震との違いや仕組みを分かりやすく解説

吹き抜けのある家を検討するときの確認ポイント

最後に、吹き抜けのある家づくりで後悔しないための、住宅会社への確認ポイントを3つに整理します。難しい専門知識は要りません。「聞いてみること」が何よりの見極めになります。

ポイント①:耐震等級2・3を標準とする会社か

まず、検討している住宅会社が、耐震等級2・3を標準として設計しているかを確認しましょう。前述のとおり、床の強さが評価基準に加わるのは耐震等級2以上からです。吹き抜けのある家を建てるなら、この基準で設計してくれる会社を選ぶことが出発点になります。ホームページや資料で等級の実績を公開している会社も多いので、比較の材料にしてみてください。

ポイント②:吹き抜け周りの壁配置・床剛性の考え方を聞く

次に、「この吹き抜けの場合、耐力壁の配置や床の強さはどう考えますか」と、具体的に聞いてみましょう。構造をきちんと検討している会社なら、壁のバランスや剛床の考え方を、図面を示しながら説明してくれるはずです。あいまいな答えしか返ってこない場合は、慎重に判断したいところです。

ポイント③:制震(制振)まで含めて相談できる会社を選ぶ

そして、開放的な間取りと地震への備えを両立させたい場合は、耐震設計に加えて、制震ダンパー(制振ダンパー)の設置まで含めて相談できる会社を選びましょう。建物ごとの計算や配置計画といった根拠を示してくれる会社なら、吹き抜けの弱点を理解したうえで、最適な備えを提案してもらえます。

>関連コラム:耐震・免震・制震どれがいい?後悔しない「地震対策」の選び方

新築・既存住宅におすすめの制震ダンパー(制振ダンパー)「MER SYSTEM」

制震ダンパー「MER SYSTEM Cross Type」の製品ポスター。日本制震システム株式会社とヤマハモーターハイドロリックシステム株式会社の共同開発。「備えることは、守ること。」

制震ダンパー(制振ダンパー)にもさまざまな種類がありますが、ここでは制震(制振)技術の応用製品として評価されている、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(エムイーアールシステム)」をご紹介します。

この制震ダンパー(制振ダンパー)は、油圧式(オイル)ダンパーを知り尽くした世界に誇るヤマハモーターハイドロリックシステムと共同開発した製品で、以下の特徴を持っています。

Cross Type(壁内設置型)

制震ダンパー

①多方向の揺れに対応

柱と梁に設置し、横方向やねじれの揺れ、共振に効果的なタイプです。建物の構造躯体に設置する高性能な制震ダンパー(制振ダンパー)で、特殊オイル(温度不変)を使用しているため、火災の心配もありません。地震はもちろん、強風(台風)・交通振動にも効果を発揮します。 基本的には新築住宅への導入となりますが、Cross Typeであれば、リフォーム(耐震改修)時にも対応可能です。在来工法・2×4工法に対応しています。

②高い耐久性

  • メンテナンスフリー
  • ヤマハ社の特許技術を採用

ヤマハ社との共同開発により、メンテナンスフリーを実現しています。壁の中に設置されているため、基本的に点検やメンテナンスはできません。そのため、制震ダンパー(制振ダンパー)を選ぶ際は、耐久性が重要なポイントとなります。

③高い安全性

  • 大地震から微振動まで様々な揺れを100年間想定した耐久テストをクリア
  • オイル漏れを防ぐ高性能なオイルシールを採用
  • 1棟1棟 最適な配置計画と数値的根拠となる計算書のご提出

④繰り返し地震への耐性

余震を含む複数回の地震にも効果を発揮します。地震の揺れに限らず風による超極低速な揺れや、繰り返し発生する地震にも効果を発揮します。

制震装置

Base Type(基礎設置型)

基礎と土台の間に設置し、1階の床下から効果を発揮するタイプです。横揺れ・縦揺れの両方に対応します。また、電車や大型車等による交通振動にも効果を発揮します。基礎と土台の間に設置する構造上、新築時のみの設置となります。

交通振動に効果のある制震装置

① 多方向・多種類の揺れに対応

  • 「耐震+制震」の相乗効果: 住宅会社様の耐震技術に、地震エネルギーを10〜30%吸収する本製品を組み合わせることで、あらゆる揺れに大きな効果が期待できます 。
  • 従来のパッキンの利点を維持: 従来の樹脂製パッキンと同様の通気(換気)性を確保しながら、地震の揺れや衝撃を吸収するプラスのメリットを備えています 。

② 交通振動(縦揺れ)への圧倒的な効果

  • 不快な微振動を大幅軽減: 線路や幹線道路沿いで問題となる、トラック・電車・新幹線などによる交通振動を大幅に軽減し、快適な住環境を確保します 。
  • 縦揺れへの有効性: 建物へのダメージや住人の心身に影響を与える「縦揺れ」に対しても、基礎下から衝撃を吸収することで優れた効果を発揮します 。

③ 特殊構造による高い安全性と剛性維持

  • 特殊鋼板入りのハイブリッド構造: ゴムの中に特殊鋼板を封入することで、荷重に対するゴムの潰れや、水平方向への過度な変形を抑制します 。
  • 建物の歪みを防止: 振動や衝撃を吸収することで、柱が土台へめり込むのを軽減し、建物の剛性を長期にわたって維持することが可能です 。

④ 100年先を見据えた耐久性と実績

  • メンテナンスフリーの耐久性: 耐久年数100年を誇り、防振性と耐久性に優れた天然ゴムとスチレン・ブタジエンゴムを素材として採用しています 。
  • プロが選ぶ信頼の実績: 開発から23年、5万棟以上の導入実績があり、大手分譲系ハウスメーカーでも快適な住環境を提供するための独自の基準として採用されています 。
交通振動

まとめ:開放感と安心感は、設計しだいで両立できる

吹き抜けのある家でも、正しく設計すれば十分な耐震性を確保できます。耐力壁の配置や床剛性の工夫、構造計算によって「倒壊しない家」という土台を確保したうえで、揺れのエネルギーを吸収する制震ダンパー(制振ダンパー)を組み合わせれば、「繰り返しの揺れにも備えた家」を目指せます。開放感と安心感は、どちらかを諦めるものではなく、設計しだいで両立できるものです。吹き抜けのある家を検討し始めた今このタイミングで、耐震と制震(制振)の両面を専門家に相談してみてください。「MER SYSTEM」の詳しい資料は、日本制震システム株式会社までお気軽にご請求ください。

SUPERVISOR 監修者
高橋 治

高橋 治(Osamu Takahashi)

東京理科大学 工学部 建築学科 教授
/博士(工学) /構造設計一級建築士/
構造計算適合判定資格者/建築構造士

1991年、東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社構造計画研究所を経て、現職に至る。専門は建築構造設計、免震・制振技術。
「建物の安全と快適性を、革新的な技術で両立させる」ことを信条に、建築用オイルダンパーや三次元免震システムなど、最先端の耐震・免震技術の研究開発を牽引する第一人者。
日本建築学会賞(技術)や日本免震構造協会協会賞(技術賞)など受賞多数。大学発ベンチャー「株式会社サイエンス構造」の代表も務める。
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