住まいづくり

耐震基準適合証明書の取得方法とは?費用・期間・流れから旧耐震住宅の補強の選択肢まで解説

「築40年の中古住宅は、住宅ローン控除が使えない」——そう思い込んで、気になる物件を諦めていませんか。2022年度の税制改正で築年数の要件は廃止され、いまは新耐震基準に適合しているかどうかが分かれ目になりました。登記簿上の建築日付が昭和57年(1982年)1月1日以降であれば手続きは簡単ですが、それより前の住宅では「耐震基準適合証明書」の取得が住宅ローン控除などを受けるカギになります。本記事では、耐震基準適合証明書とは何か、取得の流れ・費用・期間、引き渡し前後というタイミングの注意点、そして基準に届かなかった場合の耐震補強と制震ダンパー(制振ダンパー)という選択肢まで、分かりやすく整理します。

  • 築古中古住宅で住宅ローン控除を使いたい
  • 耐震基準適合証明書の取得手順を知りたい
  • 証明書が取れない時の耐震補強法を知りたい
  • 耐震基準適合証明書にかかる費用を知りたい

耐震基準適合証明書がないと、どんな損をする?——対象になる住宅と税制優遇

中古住宅の購入で、なぜこの証明書が話題になるのでしょうか。理由は、住宅ローン控除をはじめとする税制優遇を受けられるかどうかの分かれ目になるからです。まずは、証明書が関係する優遇の中身と、対象になる住宅を整理します。

証明書がないと受けられない可能性がある税制優遇

住宅ローン控除は、年末時点の住宅ローン残高の0.7%を、所得税などから一定期間(既存住宅は原則10年間)差し引ける制度です。借入額によっては、トータルで数十万円単位のメリットになることもあります。このほか、所有権移転登記にかかる登録免許税の税率の優遇や、不動産取得税の減額といった制度も、新耐震基準への適合が前提となっています。

そして、その適合を証明する代表的な書類が耐震基準適合証明書です。なお、建設住宅性能評価書(耐震等級1以上)や既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書でも適合を示すことができ、いずれも「取得の日前2年以内」という期限の考え方が設けられています。

「昭和57年1月1日」と「1981年5月31日」——2つの日付の違い

国税庁は、昭和57年(1982年)1月1日以後に建築された家屋を、新耐震基準に適合するものとして扱っています。実務では登記簿上の建築日付で判断されるため、この条件を満たす住宅なら、証明書がなくても住宅ローン控除の対象になり得ます。

一方、耐震基準そのものの切り替わりは1981年(昭和56年)6月1日で、この日以降に建築確認を受けた建物が新耐震基準、5月31日以前が旧耐震基準です。つまり、証明書が実質的に必要になるのは、登記簿の建築日付が昭和56年12月31日以前の住宅——その大半を占める旧耐震基準の住宅ということになります。

なお、旧耐震基準の木造住宅は、実際に耐震診断を受けると基準に達しない結果になることが少なくありません。証明書の取得は「診断すれば終わり」ではなく、補強まで見据えて計画することが現実的です。

出典:国税庁「No.1211-5 要耐震改修住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

>関連記事:旧耐震基準はいつから?新耐震との違い・リスクと安全に住み続けるための対策

耐震基準適合証明書とは?発行できる人と取得までの流れ

耐震基準適合証明書は、その建物が新耐震基準に適合していることを示す書類です。ただし、誰でも発行できるわけではありません。ここでは、発行できる専門家・機関と、依頼から発行までの流れを整理します。

耐震基準適合証明書は誰が発行できる?

発行できるのは、建築士事務所に所属する建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人です。建築士については建築士法で定められた業務範囲に対応しており、規模の大きい建物では一級建築士による対応が必要になります。中古の木造戸建てであれば、耐震診断の実績が豊富な建築士事務所や検査機関に相談するのが一般的です。

依頼から発行までの流れ

流れは大きく4つのステップです。まず、設計図書や登記事項証明書、確認済証・検査済証など、手元にある資料を揃えて依頼します。次に、専門家が現地調査と耐震診断を行い、建物の耐震性を数値で評価します。その結果、基準を満たしていればそのまま証明書が発行され、満たしていなければ、補強設計に基づく耐震補強工事を行ったうえで、基準への適合を確認して発行、という流れになります。

図面が残っていない場合は、壁の中の仕様を推定・調査する手間が増え、費用や期間に影響することがあります。物件の資料がどこまで揃っているかを、早い段階で確認しておきましょう。

判定のカギは「上部構造評点」——費用と期間の目安

耐震診断の結果は、「上部構造評点」という数値で示されます。証明書を取得できるかどうかは、この評点にかかっています。数値の意味と、気になる費用・期間の目安を見ていきましょう。

上部構造評点1.0以上が発行のライン

上部構造評点とは、木造住宅の耐震診断(一般財団法人日本建築防災協会「木造住宅の耐震診断と補強方法」による一般診断法など)で用いられる指標で、建物が保有している耐力が、必要とされる耐力に対してどの程度あるかを表します。判定は4区分で、1.5以上「倒壊しない」、1.0以上1.5未満「一応倒壊しない」、0.7以上1.0未満「倒壊する可能性がある」、0.7未満「倒壊する可能性が高い」とされています。

このうち評点1.0以上であれば、新耐震基準相当の耐震性があると判断され、耐震基準適合証明書の発行が可能になります。1.0未満の場合でも、耐震補強工事によって1.0以上を確保すれば取得できます。

費用と期間の目安

費用は、木造戸建ての耐震診断で10万円前後、証明書の発行で3万〜5万円程度が目安とされています(建物の規模や図面の有無、依頼先によって変動します)。補強工事が必要な場合は、その内容に応じて別途費用がかかります。自治体によっては耐震診断の費用を補助する制度もあるため、あわせて確認するとよいでしょう。

期間は、現地調査から証明書の発行まで1〜3か月程度が目安です。補強工事を挟む場合はさらに時間がかかるため、物件探しと並行して早めに動き出すことが大切です。

出典:一般財団法人日本建築防災協会「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法(新耐震木造住宅検証法)

>関連記事:耐震基準の変遷を徹底解説|新耐震や等級3でも「制震(制振)」が検討される理由

最大の注意点は取得のタイミング——引き渡し前後の2つのパターン

耐震基準適合証明書で最もつまずきやすいのが、「いつ取得するか」というタイミングです。原則は引き渡し(所有権移転)前ですが、引き渡し後に耐震改修を行うルートもあります。2つのパターンと、進める前のチェックポイントを整理します。

パターン①:引き渡し前に売主の協力で取得する

住宅ローン控除の要件では、家屋の取得の日前2年以内に、証明のための調査が終了している必要があります。つまり基本形は、引き渡し前に耐震診断を行い、必要なら補強工事まで済ませて証明書を取得しておく形です。

このパターンでは、まだ売主が所有している建物に対して調査や工事を行うため、売主の理解と協力が欠かせません。仲介の不動産会社を通じて、早い段階から段取りを相談しておきましょう。登録免許税の優遇のように、登記の時までに証明書が必要になる制度もあるため、各種の優遇をもれなく受けたい場合は、この引き渡し前パターンが基本になります。

パターン②:引き渡し後に耐震改修をして取得する

売主の協力が得られないなどの事情で引き渡し前に取得できない場合でも、「要耐震改修住宅」の特例という道があります。取得の日までに耐震改修を行う旨の申請を行い、取得から6か月以内に耐震改修を完了させた上で居住(入居)し、新耐震基準への適合が証明されれば、住宅ローン控除の対象になり得る仕組みです。

ただし、このパターンでは登記の時点で証明書が間に合わないため、登録免許税の優遇など一部の制度は受けられないことがあります。適用期限や細かな要件は税制改正で見直されることもあるため、最新の情報を国税庁のサイトや税務署、専門家に確認しながら進めてください。

進める前の3つのチェックポイント

1つ目は、できるだけ売買契約の前に耐震診断を行うことです。契約後に想定以上の補強費用が判明しても、原則として自由に契約を解除することはできず、手付金の放棄や違約金の負担が生じ得ます。2つ目は、証明書の「期限」です。取得の日前2年以内に調査が終了していることが要件のため、古い証明書は使えません。3つ目は、確認済証・検査済証の有無の確認です。建築確認日(新耐震か旧耐震か)の判別や、耐震診断の基礎資料として重要になります。

出典:国税庁「No.1211-5 要耐震改修住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

>関連記事:新耐震基準はいつから?適用時期の確認方法と木造住宅の耐震・制震対策

評点が1.0に届かなかったら?耐震補強と制震ダンパー(制振ダンパー)という選択肢

耐震診断の結果、評点が1.0に届かないケースは珍しくありません。その場合は、補強によって基準を満たす計画を立てることになります。ここでは補強の基本と、あわせて検討したい制震(制振)という選択肢を紹介します。

まずは耐震補強で評点1.0以上を確保する

旧耐震基準の住宅では、耐震補強が絶対条件です。補強の中心は、耐力壁の増設や配置バランスの改善、柱・梁の接合部への金物補強、劣化部分や基礎の補修などで、耐震診断の結果をもとにした補強設計に沿って進めます。証明書の取得に必要な評点1.0以上は、こうした耐震補強によって確保するのが基本です。

繰り返しの揺れに備える制震ダンパー(制振ダンパー)という選択肢

そのうえで、耐震改修とあわせて検討したいのが制震ダンパー(制振ダンパー)です。制震ダンパー(制振ダンパー)は、地震の揺れによって生じるエネルギーを吸収し、建物の変形やダメージの蓄積を防ぐ装置で、本震の後に繰り返される余震にも効果を発揮し続けることが特長です。耐震補強で強くした建物にも、揺れの力は地震のたびに繰り返し加わります。制震(制振)は、その積み重ねから住まいを守る「+α」の備えといえます。

ここで注意したいのは、制震ダンパー(制振ダンパー)を設置するだけで上部構造評点が基準を満たすわけではない、という点です。証明書の取得はあくまで耐震診断と補強設計にもとづく耐震補強が土台であり、制震(制振)はその上に重ねる位置づけになります。制震ダンパー(制振ダンパー)は、基本的には新築住宅へ設置するケースが一般的ですが、製品によってはリフォーム(耐震改修)時に対応できるものもあるため、補強計画を立てる段階で専門家に相談してみるとよいでしょう。なお、導入コストは一般的に免震構造の1/3〜1/10程度とされており、具体的な金額は建物の状態や施工会社の見積もりで確認します。

診断から証明書発行まで一貫相談できる会社を選ぶ

耐震診断、補強設計、工事、そして証明書の発行までを一貫して相談できる会社を選ぶと、調査のやり直しや手続きの手戻りを防ぎやすくなります。あわせて、補強や制震ダンパー(制振ダンパー)の提案に、診断結果や計算といった根拠を示してくれるかどうかも、信頼できる相談先を見極めるポイントです。

>関連記事:制震ダンパー(制振ダンパー)は後付けできる?既存住宅で検討する際の注意点と考え方

新築・既存住宅におすすめの制震ダンパー(制振ダンパー)「MER SYSTEM」

制震ダンパー「MER SYSTEM Cross Type」の製品ポスター。日本制震システム株式会社とヤマハモーターハイドロリックシステム株式会社の共同開発。「備えることは、守ること。」

制震ダンパー(制振ダンパー)にもさまざまな種類がありますが、ここでは制震(制振)技術の応用製品として評価されている、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(エムイーアールシステム)」をご紹介します。

この制震ダンパー(制振ダンパー)は、油圧式(オイル)ダンパーを知り尽くした世界に誇るヤマハモーターハイドロリックシステムと共同開発した製品で、以下の特徴を持っています。

Cross Type(壁内設置型)

制震ダンパー

①多方向の揺れに対応

柱と梁に設置し、横方向やねじれの揺れ、共振に効果的なタイプです。建物の構造躯体に設置する高性能な制震ダンパー(制振ダンパー)で、特殊オイル(温度不変)を使用しているため、火災の心配もありません。地震はもちろん、強風(台風)・交通振動にも効果を発揮します。 基本的には新築住宅への導入となりますが、Cross Typeであれば、リフォーム(耐震改修)時にも対応可能です。在来工法・2×4工法に対応しています。

②高い耐久性

  • メンテナンスフリー
  • ヤマハ社の特許技術を採用

ヤマハ社との共同開発により、メンテナンスフリーを実現しています。壁の中に設置されているため、基本的に点検やメンテナンスはできません。そのため、制震ダンパー(制振ダンパー)を選ぶ際は、耐久性が重要なポイントとなります。

③高い安全性

  • 大地震から微振動まで様々な揺れを100年間想定した耐久テストをクリア
  • オイル漏れを防ぐ高性能なオイルシールを採用
  • 1棟1棟 最適な配置計画と数値的根拠となる計算書のご提出

④繰り返し地震への耐性

余震を含む複数回の地震にも効果を発揮します。地震の揺れに限らず風による超極低速な揺れや、繰り返し発生する地震にも効果を発揮します。

制震装置

Base Type(基礎設置型)

基礎と土台の間に設置し、1階の床下から効果を発揮するタイプです。横揺れ・縦揺れの両方に対応します。また、電車や大型車等による交通振動にも効果を発揮します。基礎と土台の間に設置する構造上、新築時のみの設置となります。

交通振動に効果のある制震装置

① 多方向・多種類の揺れに対応

  • 「耐震+制震」の相乗効果: 住宅会社様の耐震技術に、地震エネルギーを10〜30%吸収する本製品を組み合わせることで、あらゆる揺れに大きな効果が期待できます 。
  • 従来のパッキンの利点を維持: 従来の樹脂製パッキンと同様の通気(換気)性を確保しながら、地震の揺れや衝撃を吸収するプラスのメリットを備えています 。

② 交通振動(縦揺れ)への圧倒的な効果

  • 不快な微振動を大幅軽減: 線路や幹線道路沿いで問題となる、トラック・電車・新幹線などによる交通振動を大幅に軽減し、快適な住環境を確保します 。
  • 縦揺れへの有効性: 建物へのダメージや住人の心身に影響を与える「縦揺れ」に対しても、基礎下から衝撃を吸収することで優れた効果を発揮します 。

③ 特殊構造による高い安全性と剛性維持

  • 特殊鋼板入りのハイブリッド構造: ゴムの中に特殊鋼板を封入することで、荷重に対するゴムの潰れや、水平方向への過度な変形を抑制します 。
  • 建物の歪みを防止: 振動や衝撃を吸収することで、柱が土台へめり込むのを軽減し、建物の剛性を長期にわたって維持することが可能です 。

④ 100年先を見据えた耐久性と実績

  • メンテナンスフリーの耐久性: 耐久年数100年を誇り、防振性と耐久性に優れた天然ゴムとスチレン・ブタジエンゴムを素材として採用しています 。
  • プロが選ぶ信頼の実績: 開発から23年、5万棟以上の導入実績があり、大手分譲系ハウスメーカーでも快適な住環境を提供するための独自の基準として採用されています 。
交通振動

まとめ:税制優遇と住まいの安全、両方を手に入れるために

耐震基準適合証明書は、旧耐震基準の中古住宅で住宅ローン控除などの税制優遇を受けるためのカギとなる書類です。取得の分かれ目は、上部構造評点1.0以上という耐震性と、引き渡し前後というタイミングにあります。だからこそ、できるだけ売買契約の前に耐震診断を依頼し、補強が必要なら早めに計画を立てることが大切です。そして補強の際には、耐震を土台に、揺れのエネルギーを吸収する制震(制振)を重ねる選択肢もあります。地震対策に完璧はありませんが、税制優遇と住まいの安全の両方を手に入れる一歩として、まずは専門家への耐震診断の相談から始めてみてください。「MER SYSTEM」の詳しい資料は、日本制震システム株式会社までお気軽にご請求ください。

SUPERVISOR 監修者
高橋 治

高橋 治(Osamu Takahashi)

東京理科大学 工学部 建築学科 教授
/博士(工学) /構造設計一級建築士/
構造計算適合判定資格者/建築構造士

1991年、東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社構造計画研究所を経て、現職に至る。専門は建築構造設計、免震・制振技術。
「建物の安全と快適性を、革新的な技術で両立させる」ことを信条に、建築用オイルダンパーや三次元免震システムなど、最先端の耐震・免震技術の研究開発を牽引する第一人者。
日本建築学会賞(技術)や日本免震構造協会協会賞(技術賞)など受賞多数。大学発ベンチャー「株式会社サイエンス構造」の代表も務める。
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