地震対策

長周期地震動とは?ゆっくり長く揺れる仕組みと起こりやすい条件・住まいの備えを解説

大きな地震のあと、「震度のわりに、揺れがやたら長かった」と感じたことはありませんか。実は、ニュースで発表される震度は地表付近の比較的短い周期の揺れを対象とした指標で、ゆっくりと長く続く揺れの実態までは表しきれません。そのため気象庁は、震度とは別に「長周期地震動階級」という専用の指標を運用しているほどです。こうした揺れは高層マンションの上層階や、地盤の柔らかい平野部で特に感じやすく、内見や短時間の見学ではまず気づけません。本記事では、「この揺れはうちだけなのか」というモヤモヤに答えるため、長周期地震動の仕組みと起こりやすい条件を整理し、家具の転倒防止対策の限界と、建物そのものに働きかける制震ダンパー(制振ダンパー)という選択肢まで解説します。

  • 長周期地震動の仕組みが知りたい
  • 震度と揺れの違いを知りたい
  • 住宅の地震対策を知りたい
  • 制震ダンパーの効果を知りたい
目次

長周期地震動とは?——「震度」だけではわからない、ゆっくり長く続く揺れ

大きな地震のニュースで、「長周期地震動」という言葉を耳にする機会が増えました。ガタガタという一般的な地震の揺れとは、何が違うのでしょうか。まずは言葉の意味と、震度との関係を整理します。

長周期地震動とは——ゆっくり大きく、長く続く揺れ

地震が起きると、実はさまざまな周期(揺れが1往復する時間)の揺れが同時に発生しています。このうち、周期の長いゆっくりとした大きな揺れが「長周期地震動」です。小刻みなガタガタという揺れとは異なり、船に乗っているようなゆらゆらとした揺れが長く続くのが特徴で、特に高層ビルの上層階では大きくなりやすいことが知られています。

震度とは別の指標「長周期地震動階級」がある

「震度は小さかったのに、長く大きく揺れた」——この体感は、気のせいではありません。震度は地表付近の比較的短い周期の揺れを対象とした指標のため、高層階でのゆっくりとした揺れの程度までは表しきれないのです。

そこで気象庁は、震度とは別に「長周期地震動階級」という指標を運用しています。固有周期1〜2秒から7〜8秒程度の揺れが生じる高層ビル内での、人の行動の困難さや家具の移動・転倒などの程度を、階級1〜4の4段階で区分するもので、対象はおおむね14〜15階建て以上の高層ビルです。2023年2月からは、階級3以上が予想される場合に緊急地震速報の対象にも加わりました。つまり「揺れが長い」という体感は、国の防災情報でも専用の指標が用意されるほど、はっきりと位置づけられた現象なのです。

出典:気象庁「長周期地震動階級および長周期地震動階級関連解説表について

>関連コラム:家が揺れるのはなぜ?考えられる原因と、揺れにくくするための対策

なぜ起こる?——地震の規模・地盤・建物の固有周期という3つの掛け合わせ

長周期地震動による揺れやすさは、震源からの距離だけでは決まりません。カギを握るのは、地震の規模・地盤の性質・建物の固有周期という3つの要素です。ひとつずつ見ていきましょう。

規模の大きい地震ほど、遠くまで伝わる

長周期地震動は、マグニチュードの大きい地震ほど生じやすい性質があります。しかも、短周期の揺れに比べて減衰しにくいため、震源から数百km離れた場所まで伝わります。東日本大震災では、震源から遠く離れた大阪の超高層ビルが約10分間揺れ続けたという事例が知られており、「震源が遠いから関係ない」とはいえないのが長周期地震動の特徴です。

厚い堆積層の平野で増幅される

もうひとつの条件が地盤です。関東平野・大阪平野・濃尾平野のように、柔らかい堆積層が厚く覆う平野部では、長周期の揺れが増幅されます。厚く柔らかい層の中で、揺れが大きくなりながら長く続きやすくなるためです。日本の大都市の多くはこうした平野の上にあり、高層建築物が集まる場所と、長周期の揺れが増幅されやすい地盤が重なっていることになります。

建物の固有周期と「共振」——木造住宅への影響は?

3つ目の要素が、建物側の性質です。建物には「固有周期」と呼ばれる揺れやすいリズムがあり、目安としては階数×0.1秒程度、高い建物ほど長くなります。高層ビルの固有周期は長周期地震動の周期と一致しやすく、「共振」によって長時間大きく揺れ続けることになります。

一方、木造住宅は固有周期が短いため、長周期地震動と共振しにくいのは事実です。ただし、無縁というわけではありません。軟弱地盤の上では揺れの増幅や長時間化の影響を受けやすく、旧耐震基準の時代に建てられた住宅や経年劣化が進んだ木造住宅では、その影響をより受けやすくなります。つまり長周期地震動による揺れやすさは、「地震の規模×地盤の性質×建物の固有周期・状態」の掛け合わせで決まるのです。

出典:地震調査研究推進本部「長周期地震動に関する情報について(気象庁)

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突っ張り棒や耐震マットでは届かない領域がある

長周期地震動への備えというと、まず家具の固定を思い浮かべる方が多いはずです。それは正解であり、欠かせない基本です。ただし、家具対策にできることと、できないことは分けて考える必要があります。

突っ張り棒・耐震マットは「必須の基本」

ゆっくりと大きな揺れが長く続く長周期地震動では、家具が滑るように大きく移動したり、転倒したりしやすくなります。突っ張り棒やL字金具による固定、耐震マット、引き出しの飛び出し防止といった対策は、室内の被害やケガを防ぐうえで欠かせない基本であり、費用面でも取り入れやすい備えです。まだの方は、まずここから始めてください。

それでも「建物そのものの揺れ」には働きかけられない

ただし、これらはあくまで「揺れを受け止める側」の対策です。家具の転倒には備えられても、地盤から建物に伝わる揺れそのもの——床や壁が揺れるという現象そのものに働きかけることはできません。

そして、比較的小さな力の揺れであっても、繰り返し・長時間続くと、建具の立て付けの狂いや壁の細かなひび割れ、睡眠への影響といった、蓄積的な負担につながる可能性が指摘されています。一度の大きな衝撃だけでなく、「小さくても長く、何度も」という揺れ方こそが、長周期地震動の注意点なのです。

揺れやすさは、建物のコンディションを映すサインにもなる

特に、旧耐震基準の住宅や経年劣化が進んだ木造住宅では、揺れを感じやすくなっていることがあります。「大きな地震のあと、前より揺れるようになった気がする」という変化は、接合部の緩みなど建物のコンディションを映すサインかもしれません。

地震の規模や地盤の性質は、自分では変えられません。しかし、建物側の「揺れにくさ」は対策できます。次の章では、その選択肢を見ていきましょう。

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建物そのものの揺れに働きかける——制震ダンパー(制振ダンパー)という選択肢

建物側の揺れ対策として注目したいのが、制震ダンパー(制振ダンパー)です。一度の大きな地震に耐えるための装置と思われがちですが、長周期地震動のような「繰り返す揺れ」との関わりも深い選択肢です。仕組みと考え方を整理します。

制震ダンパー(制振ダンパー)は「建物全体」に働きかける

制震ダンパー(制振ダンパー)は、柱や梁といった建物の構造体に直接設置し、揺れのエネルギーを吸収して、建物の変形やダメージの蓄積を防ぐ装置です。家具単位・部屋単位の対策とは異なり、建物の骨組みそのものに作用するため、部屋ごとの工夫では届かない「建物全体の揺れやすさ」にアプローチできるのが大きな違いです。

ゆっくりした揺れ・繰り返す揺れに効果を発揮する製品もある

製品の中には、一度の大きな衝撃だけでなく、長周期地震動のようなゆっくりとした揺れや、余震を含めて繰り返し続く揺れにも効果を発揮し続けるものがあります。長周期地震動の特徴は「小さくても長く、繰り返す」こと。揺れのたびにエネルギーを吸収し続けるタイプの制震(制振)は、こうした揺れ方と相性の良い備えといえます。

耐震という土台の上に組み合わせる

注意したいのは、制震(制振)は耐震の「代わり」ではないという点です。地震対策の基本は、耐震という土台があった上で制震(制振)や免震を組み合わせるという順序であり、長周期地震動への備えでも変わりません。既存の住宅で検討する場合は、まず建物の耐震性や劣化の状態を確認することが出発点になります。そのうえで、リフォーム(耐震改修)にあわせて導入できる製品もあるため、補強計画と一緒に専門家へ相談してみるとよいでしょう。どの位置に何本設置すれば効果的かは建物ごとに異なるため、計算にもとづく配置計画を示してくれるかどうかも、相談先を見極めるポイントです。

>関連コラム:MER-SYSTEMならスリップ挙動にも対応!

気になる揺れとの向き合い方——記録・診断・相談の3ステップ

「揺れが気になるけれど、何から始めればいいのか分からない」という方のために、向き合い方を3つのステップで整理します。いきなり工事を検討する必要はありません。まずは現状を知ることからです。

ステップ①:揺れの強さ・長さ・タイミングを記録する

地震があったら、揺れの強さ・続いた長さ・感じた場所(階や部屋)をメモしてみましょう。「震度のわりに長く揺れた」「2階だけ大きく感じた」といった記録は、住まいの揺れの傾向をつかむ手がかりになり、後で専門家に相談する際の貴重な材料にもなります。あわせて、地震のあとに気象庁が発表する長周期地震動に関する観測情報を確認すると、体感と照らし合わせる手がかりになります。

ステップ②:建物の異変を感じたら専門家の診断を

揺れとあわせて、壁のひび割れや建具の立て付けの変化など、建物の異変に気づいた場合は、自己判断せず、専門家による建物診断(耐震診断)を受けることをおすすめします。地震のあとに揺れの感じ方が大きくなってきた場合も同様です。原因が建物側にあるのかどうかを切り分けることが、適切な対策の第一歩になります。

ステップ③:診断から施工まで一貫して相談できる会社へ

診断の結果、補強や対策が必要になった場合は、耐震診断から補強設計、制震ダンパー(制振ダンパー)の設置まで一貫して相談できる専門会社に依頼すると、手戻りなく進めやすくなります。建物ごとの計算や配置計画といった根拠を示してくれる会社なら、より安心です。

>関連コラム:耐震・免震・制震どれがいい?後悔しない「地震対策」の選び方

新築・既存住宅におすすめの制震ダンパー(制振ダンパー)「MER SYSTEM」

制震ダンパー「MER SYSTEM Cross Type」の製品ポスター。日本制震システム株式会社とヤマハモーターハイドロリックシステム株式会社の共同開発。「備えることは、守ること。」

制震ダンパー(制振ダンパー)にもさまざまな種類がありますが、ここでは制震(制振)技術の応用製品として評価されている、日本制震システム株式会社の「MER SYSTEM(エムイーアールシステム)」をご紹介します。

この制震ダンパー(制振ダンパー)は、油圧式(オイル)ダンパーを知り尽くした世界に誇るヤマハモーターハイドロリックシステムと共同開発した製品で、以下の特徴を持っています。

Cross Type(壁内設置型)

制震ダンパー

①多方向の揺れに対応

柱と梁に設置し、横方向やねじれの揺れ、共振に効果的なタイプです。建物の構造躯体に設置する高性能な制震ダンパー(制振ダンパー)で、特殊オイル(温度不変)を使用しているため、火災の心配もありません。地震はもちろん、強風(台風)・交通振動にも効果を発揮します。 基本的には新築住宅への導入となりますが、Cross Typeであれば、リフォーム(耐震改修)時にも対応可能です。在来工法・2×4工法に対応しています。

②高い耐久性

  • メンテナンスフリー
  • ヤマハ社の特許技術を採用

ヤマハ社との共同開発により、メンテナンスフリーを実現しています。壁の中に設置されているため、基本的に点検やメンテナンスはできません。そのため、制震ダンパー(制振ダンパー)を選ぶ際は、耐久性が重要なポイントとなります。

③高い安全性

  • 大地震から微振動まで様々な揺れを100年間想定した耐久テストをクリア
  • オイル漏れを防ぐ高性能なオイルシールを採用
  • 1棟1棟 最適な配置計画と数値的根拠となる計算書のご提出

④繰り返し地震への耐性

余震を含む複数回の地震にも効果を発揮します。地震の揺れに限らず風による超極低速な揺れや、繰り返し発生する地震にも効果を発揮します。

制震装置

Base Type(基礎設置型)

基礎と土台の間に設置し、1階の床下から効果を発揮するタイプです。横揺れ・縦揺れの両方に対応します。また、電車や大型車等による交通振動にも効果を発揮します。基礎と土台の間に設置する構造上、新築時のみの設置となります。

交通振動に効果のある制震装置

① 多方向・多種類の揺れに対応

  • 「耐震+制震」の相乗効果: 住宅会社様の耐震技術に、地震エネルギーを10〜30%吸収する本製品を組み合わせることで、あらゆる揺れに大きな効果が期待できます 。
  • 従来のパッキンの利点を維持: 従来の樹脂製パッキンと同様の通気(換気)性を確保しながら、地震の揺れや衝撃を吸収するプラスのメリットを備えています 。

② 交通振動(縦揺れ)への圧倒的な効果

  • 不快な微振動を大幅軽減: 線路や幹線道路沿いで問題となる、トラック・電車・新幹線などによる交通振動を大幅に軽減し、快適な住環境を確保します 。
  • 縦揺れへの有効性: 建物へのダメージや住人の心身に影響を与える「縦揺れ」に対しても、基礎下から衝撃を吸収することで優れた効果を発揮します 。

③ 特殊構造による高い安全性と剛性維持

  • 特殊鋼板入りのハイブリッド構造: ゴムの中に特殊鋼板を封入することで、荷重に対するゴムの潰れや、水平方向への過度な変形を抑制します 。
  • 建物の歪みを防止: 振動や衝撃を吸収することで、柱が土台へめり込むのを軽減し、建物の剛性を長期にわたって維持することが可能です 。

④ 100年先を見据えた耐久性と実績

  • メンテナンスフリーの耐久性: 耐久年数100年を誇り、防振性と耐久性に優れた天然ゴムとスチレン・ブタジエンゴムを素材として採用しています 。
  • プロが選ぶ信頼の実績: 開発から23年、5万棟以上の導入実績があり、大手分譲系ハウスメーカーでも快適な住環境を提供するための独自の基準として採用されています 。
交通振動

まとめ:長周期地震動への備えは、「建物側」から考えられる

長周期地震動は、震源から遠く離れた場所でも、ゆっくりと大きな揺れを長時間もたらすことがある現象です。揺れやすさは地震の規模だけでなく、地盤の性質や建物の固有周期・築年数の掛け合わせで決まります。突っ張り棒や耐震マットといった家具の転倒防止は欠かせない基本ですが、建物そのものの揺れには働きかけられないという限界もあります。地震の規模や地盤は自分では変えられませんが、建物側の揺れにくさは対策できます。気になる揺れが続くようなら、まずは体感の記録と専門家による建物診断から始めて、揺れのエネルギーを吸収する制震ダンパー(制振ダンパー)という選択肢も含めて相談してみてください。「MER SYSTEM」の詳しい資料は、日本制震システム株式会社までお気軽にご請求ください。

SUPERVISOR 監修者
高橋 治

高橋 治(Osamu Takahashi)

東京理科大学 工学部 建築学科 教授
/博士(工学) /構造設計一級建築士/
構造計算適合判定資格者/建築構造士

1991年、東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。株式会社構造計画研究所を経て、現職に至る。専門は建築構造設計、免震・制振技術。
「建物の安全と快適性を、革新的な技術で両立させる」ことを信条に、建築用オイルダンパーや三次元免震システムなど、最先端の耐震・免震技術の研究開発を牽引する第一人者。
日本建築学会賞(技術)や日本免震構造協会協会賞(技術賞)など受賞多数。大学発ベンチャー「株式会社サイエンス構造」の代表も務める。
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